俺達は、主に教室で形成されるA棟から、科目教室で形成されるB棟に繋がる渡

り廊下を通って移動する。



「あ、ここです」



俺達を先導してきたクラスメイトが『多目的室』と書かれたプラカードが掛けられて

いる教室の前で立ち止まる。


まぁ、言わなくてもこの異常な騒がしさで、誰でも分かると思うが・・・



『ガラガラッ』



クラスメイトが、ドアを開ける。


俺達が後に続く。


蓮也が入って歓声があがる。


お約束の流れ・・・




::第8話 - story4::




とりあえず、蓮也を前に残して俺達は席に付く。



「ハ~イ!皆さん!今日から新しくこのC組みの仲間となります、車岳 蓮也君です」



もはや、MCと化す先生。



「「「イエ~~~~~!!」」」



なんだ、そのテンション。



「オレ、車岳 蓮也!耀厲ちゃんとは、中学時代の大の親友!ヨロシク~~~!!」



そして、勢いの乗るバカが一匹・・・



「「「「イエ~~~~~~~~~~~イ!!!」」」」



更に煽るクラスの連中。


好きにしろ。



『リ~ンゴロ~ン!リ~ンゴロ~ン!』



丁度ナイスなタイミングで鐘が鳴る。


ざまあみろ。



そんでもって、昼食時間なものだから、クラスは一斉に散らばる。


どうやら、何が起ころうと昼食の時間だけはきっちりと守るらしい。

無駄な律儀さ。


教卓の前には、蓮也が独り寂しく突っ立っていた。


そして、静かに俺の席に向かってくる。



「気が済んだか?」


「あぁ、こーゆークラスってのが分かった。しかもスッゲェ恥ずかしい」


「調子に乗らないことだ」


「そうする」


「って、なにどさくさに紛れて前の席に座ってんだよ。お前の席じゃねぇだろうが」


「だって、耀厲の前の席は俺の物って決まりじゃん」


「勝手に決めんな!」



蓮也の後ろに目を移すと、この席の所有者である、麻川さんが物凄く戸惑ってい

た。 



あ、ちなみに6月に入ったので席替え済み。



しかし、運が良いのか悪いのか、俺とルミナはくじ引きしたにも関わらず同じ席で

ある。



「ほら、麻川さんが困ってんだろ。ホラ、退け!」



俺はそう言うと、蓮也の両腕を掴んで後ろにポーンと投げ捨てた。



『ガラガッシャーン!!』



頭から落ちたような音が聞こえたが無視する。



「ヨウライ君、お昼どうする?」



と、ルミナが美香と焔を引き連れてやってきた。



「あー、ここでいいだろ。机つけたら十分じゃねぇの?」


「分かった」



ルミナは自分の机を90度変え、俺も90度変えてルミナの机と合わせる。



「をい!コラ!耀厲!人をむやみやたらに飛ばすんじゃねぇ!」



無傷で立ち上がる蓮也。



「テメーが邪魔だからだろうがよ」



冷たーい視線を蓮也に送る。



「にひても、結構頑丈ね。この子」


「コレ(蓮也)の事か?」


「ほ」



美香は箸を咥えながら弁当箱に入っているエビフライにソースをかける。



「何を隠そう、コイツは『鋼鉄の馬鹿』の異名を未だに持ち続けている偉人だ」


「異人じゃないのね」


「むしろそっちの方向性が強い」



貶すだけ貶す俺達。



「その前に、どうゆう人なの?」


「傍若無人で八方美人。それ以上に自信過剰の向かうところ敵ばかりの哀れ、且

つ大胆不敵な大馬鹿野郎」



7割方は補足だけど。



「へ、へ~・・・」



ルミナが額に汗を垂らしながら軽蔑を含んだ眼差しで蓮也を見る。



「あぁっ!ルミナちゃん!そんな目で見ないでくれ!」



ルミナはもの凄く嫌そうな顔をした。



「な、なんか皆の見る目が厳しいのは気のせいかしら!?」



蓮也がたじろぐ。



「初対面の人間に対して軽々しく名前を呼びゃぁ、そうなるわな」



そう言う俺の目はもっと冷たい。



「耀厲!お前まで!?」



遂に泣き出した。



「アホ。迷惑だろうが。さっさとこっち来い」



蓮也はぐしぐし言いながら俺の傍まで来る。



「って、俺、昼飯ないんだけど」



蓮也はピタリと泣きを止める。



「・・・・・・。」



俺は箸を咥え止め、殴りかかる衝動を抑えながら、バッグの中をガサゴソと漁る。



「ん」



そう言って何故かバッグに入っている、買った覚えのないメロンパンを蓮也に放り

投げた。



「サンキュ。んで、コレどこで買って来たんだ?」


「誰も知らない購買?」


「怖っ!?」


「やかましい。メシを貰えるだけありがたいと思え」


「この学校、購買なんてあったかしら?」



美香が箸を止めて考え出す。



「ルミナっち知ってる?」


「ううん。知らない」


「脩子ちゃんは?」



焔は黙って首を横に振った。



「カワラっちは知ってるの?」


「ああ」


「ホント!?何処にあるのよ!」



そんなにムキにならなくても・・・



「生徒玄関のすぐ右側」



飯を口に運びながら俺はそう言った。



「後で見に行こ」



美香はシャカシャカと弁当を攫い食いしていく。


そんなに見たいか?購買が。



パッと目を教室にやると、生徒の数が少ない。


皆、次々に教室から出て行く。


何事だ?



「今日、テストの結果が貼り出されるんです・・・」



と、焔が言う。


ついでに、また心読まれた。



「そう言えばそうだったね」


「そうだ。購買行くついでに結果も見てこうよ」



美香にしては珍しくもっともな発言をする。


でも、逆じゃね?


テストの結果メインじゃないんだ。


どうでもいいけど。



「そうするか。丁度飯も終わった所だし」



俺は弁当に蓋をして片付ける。



「じゃぁ、いこっか」



美香が立ち上がり、ン~~!と背伸びをする。



「ほうはい、ほほいふんはほ?(耀厲、何処行くんだよ?)」


「話聞いてなかっただろ」



蓮也はメロンパンをほお張りながら頷く。



「お前が日本に帰ってくる一週間前にしたテストの結果が、今日貼り出されるから

見に行くんだよ」


「ふぁぁ、ほえをひうひう(じゃぁ、俺も行く行く)」



メロンパンをむさぼりながら言葉を発するな。

鬱陶しい。



「行くぞ」


蓮也はシュタッと立ち上がって走りながら付いて来る。



A棟1階、生徒玄関付近──



「「「キャーーーー!!」」」



「「「キャーーーーー!!!」」」



やっぱりこうゆう展開になる。



「「「カッコイーーーーーー♡♡♡♡」」」



あ、そうか。

本性知らないんだよな。



「何?俺ってそんなに?」



何を呆けた事言ってんだこの馬鹿は。



「そりゃあ、外見だけはいいからな」


「だけ・・・?」


「外見だけ」


「中身は・・・?」


「腐・・・」


「何ぃ!?そんな事を言う奴にはこうしてやる!」



蓮也は俺の背中に飛び付いてきた。



「うわっ!このバカ!何すんだ!」


「俺を愚弄した罰だ!快く喰らえ!」



快くないわ!


そんな蓮也をルミナはジト~・・・と睨んでいた。



「降りろ」


「イーヤーダ」


「降ーりーろ」


「イーヤーダー」


「フンッ!!」



俺は蓮也の頭を掴むと、前に投げ捨てた。



『ベシャッ!』



と、再び頭から落ちた。



「イテテ・・・」



が、相変わらず怪我はしない。



「ちゅうもーーーーく!」



俺は大声を出して、通行人全てを止める。



「ここにいる車岳蓮也君が、皆さんとお友達になりたいと言っています。どうぞ、お構

いなく拉致って下さい!」


「んなぁっ!?拉致って何だよ!拉致って!?」



「「「「「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」」」」」



女子生徒からすると願ってもいない事だったので、まるで腹を空かせた肉食動物がシ

マウマに襲い掛かるような如く、一斉に蓮也に飛び掛った。



「わっ!わっ!!わ~~~~!!!!???」



蓮也は目を丸くして逃げ惑う。



「ちょ、ちょっと!耀厲!!?ヨウラ~~~~~~~~イ!!!!!」



俺に助けを求めているようだが、生憎、今更助けに行ける様な状況ではない。


廊下の横幅いっぱいに、女子生徒で埋め尽くされているから尚更の事。



ここからだと、まるで蓮也の姿を捉えることはできない。



「ギャーーーーーーーーーー!!!!!」



その断末魔の叫びを最後に蓮也の声は聞こえなくなった。