次の日、これ以上生徒会のメンバーが出てくるかどうかが不安だったので、

もう一度あの学院概要の本を求めて俺は図書室に向かった。


とりあえず、今まで出会ったのはあの3人を除いて・・・ 


5人か・・・


多いな・・・




::第12話 - story4::




『ガラガラ』



「あ、甓尖君・・・」


「よう、焔」



いつものように焔がカウンターに座っている。


と、今日は焔の隣にもう1人いた。


もの凄くゆったりとした表情をしている。



「ここでいいの?」


「えぇ、お願いね」



カウンターの後ろにある掲示板に校内のお知らせポスターを貼っている人が

見えた。


おそらく広報委員の人だろう。



「じゃぁ焔さん。後はよろしくお願いしますね」


「はい、部長・・・」



部・・・ 長・・・?



「あ、あのさ焔。その人ってまさか・・・」



俺はおそるおそる焔に訊ねる。



「はい・・・ 生徒会、図書部長の牛尾 絵里奈(うしお えりな)さんです・・・」



・・・・・・。


先回りされたか・・・ 



俺は額を押さえながらガックリとうな垂れた。



「まだまだ若いのにねぇ〜、そんなにうな垂れてると幸先よくないよ〜〜?」



俺にかけられた声がしたのでパッと顔を起こすと、奥の机の上に突っ伏しな

がら虚ろな目で顔をこっちに向けてる人がいた。


いや、あんたこそ何でそんなにぐーたれてんだよ・・・ 



「こ〜ら、未来ちゃん。そんな体勢で人と話しちゃダメじゃない」



牛尾さんは話し方も非常にゆったりとしていた・・・ 


いや、そんな話し方だと説得力もないでしょう



「でもね〜、これが私のスタイルなのよね〜〜」




指摘されたにも関わらず、同じ体勢のままぐーたれながら喋る。



「実際〜、生徒会の仕事もこんな感じだからね〜〜」



え?



「あらまぁ、大変ねぇ」




今、何て・・・?



「あ、あの・・・」


「ん〜〜?な〜に〜〜?」


「あなたは・・・?」


「あ〜、あたし〜?あたしはね〜、鬼枯 未来(きがらし みく)。これでも生徒

会、文化部長してるのよね〜」



こんな人が入れる生徒会って・・・


もう、何でも有りなのか?



「ちょっと、冗談じゃないわよ」



先程ポスターを貼っていた広報委員の人が仕事を終え、不満そうに口を挟

んできた。



「あなた達の仕事のペースが遅いから3日で終わる仕事が5日もかかってる

んじゃない」



腰に手を当て、プンスカと怒る。



「いいじゃないのよ辰美〜」


「良くないわよ。仕事を回されるこっちの身にもなってよ。ただでさえ、自分の

仕事でいっぱいいっぱいなのに」



ま、まさか・・・



「あ、気になる〜?この子は活屋 辰美(かつや たつみ)。で、生徒会の広報

部長してんのよ〜」



ト、トリプル・・・



「奏さんから聞いてるわ。よろしくね」


「え、えぇ・・・」



勾野さんの陰謀か・・・? 


いや、考えにくい。


いくら生徒会長だからって言ったって・・・



「所で、君は何しに来たの?本を探しに来たんじゃないの?」



そうだった。


てか、あんた達に止められてたんじゃねぇか。



「焔、この前俺が借りてた本、どこにある?」


「あ、これですか・・・?」



カウンターの引き出しから、例の学院概要書が出てきた。



「何でそんな所に・・・?」


「読む人がいないんで・・・」



あ、そ。



「ありがと」



カウンターからすぐ手前の机に陣取り、パラパラとページをめくる。


目的は生徒会の構造だ。



「あ、その本おもしろいでしょ」



ふいに、活屋さんが覗き込んできた。



「241ページ見てみなよ。君の事が載ってた筈だけど」



何っ!?


それを聞いた俺は、もはや生徒会の構造どころではなかった。


必死になって241ページを探す。



見つけた!



『“今期のPICK UP生徒” 異例の転入生、甓尖 耀氏i1−C) 聖クライア

ンヌ女学院に衝撃が走った。一体、どういう事なのだろうかと、教師陣も疑問。

しかし、その美貌は女子生徒は勿論の事教師陣をも魅了し、皆を虜にした。

────・・・』



そこには、何故か俺の事に関する記事で3ページ程費やしていた。


オマケに写真まで記載されている・・・



「・・・・・・。」



俺は唖然としながらそのページに見入っていた。



「いや、ね?実はその記事、あたしが引き金なんだ」



はい?



「君が転入して来た時、『コレはいけるわ』って思って、新聞部にネタを提供し

ちゃったのよ。あははは」


「まさかとは思いますが広報部でも取り上げたりなんかしていませんよね?」


「あ〜・・・」



活屋さんの動きが止まる。


やったのか・・・ 



「さ、最初は職員室だけだったんだけど・・・」



・・・・・・。


あの時には既に手遅れだったのか・・・(第1話・#2)



「その時の光景見てて、『あ、コレおもしろ!』って思っちゃってね」



いけしゃーしゃーと喋る。


とりあえず、性格悪いのは確定と・・・ 



「ところで、生徒会のぺージ見てたけど、何か気になることでもあるの?」



あぁ、忘れてた。


なんか調子狂うんだよな・・・ 


再び、生徒会の記事を記したページを探す。



「生徒会もね〜、あんなにも人数いらないと思うんだけどさ〜」



だらけきった鬼枯さんの台詞を、俺の耳が捉えた。



「今更言う事?それ」


「だぁってさぁ〜、12人も揃った所でする事ないのよ〜?」


「する事がないんじゃなくて、やる事をしないんでしょうが!」


「あらまぁ」


「あ〜ぁ〜 言われちゃった〜」



1人激昂する活屋さんをあざける様に顔を見合わせてグダる鬼枯さんと牛尾

さん。


そりゃぁストレスも溜まるわな。


つか、調べたかった事を鬼枯さんに言われてしまったから、もう用はない。


俺は本を焔に返してさっさと図書室を後にした。



12人か・・・ 


って事は、最低あと4人・・・ 

か・・・ 



「はぁ・・・」



俺は溜息を吐きながら背中をまた小さくするのだった。



それから数日。



『ガラガラガラ』



体育の授業後、零次と二人で片付けをさせられ、不貞腐れながら体育倉庫

に道具を返しに行く最中だ。



「ジャンケン弱いな・・・ 俺ら・・・」



よりによって、39対2のグー負けを期したのだ。



「滅多にないですよ?あの人数で」


「ある意味奇跡だな・・・」



我ながら、本当にそう思う。


まさか40人もいてジャンケンで決まるとは思わなかったからな。



『ゴンッ!』



「あいたっ!」



突如、頭に何かが落ちてきた。



「大丈夫ですか!?」


「あ、あぁ・・・」


「リンゴ・・・?」


「あら、ゴメンね」



頭の上から声が聞こえたので見上げてみると、木の枝に腰をかけながらリン

ゴにかじりついてる人がいた。



「何をしているんですか・・・?」


「見て分かんないかな?リンゴ食べてるの」



そういう事を訊いてるんじゃねぇよ。



「こちらの訊き方が悪かったようですね。何故枝の上でリンゴを?」


「見晴らしがいいのよ。学院が見渡せてね」


「そうですか、では落ちないようにお願いします。落下事故の第一目撃者と

か嫌ですから」



直感か、あまり関わらない方が良い的な気がしたのでその場を去ろうとした。



「ちょい待ち」



止められた・・・



「甓尖耀詞Nと魅堂零次君ね?」



「そ、そうですが・・・?」



俺らにそれだけ確認すると、その人は枝から飛び降りて当然のように着地し

た。


3・4mはあるぞ・・・?



「噂には聞いていたけど、やっぱり美形ね」


「はぁ・・・」



そんな事言われても・・・



「まぁ、だから何?って話しにもなるんだけどさ」


「はぁ・・・」



自分で解決しちゃってるよ。



「でも、あたしとしては魅堂君の方がタイプなのよね」



狙いが零次に変わる。



「断る」



零次は即答でキッパリと断った。



「あらま、フラれちゃった。まぁいいわ」



軽っ!!

サッパリすぎるだろ、いくらなんでも。



「あ、そうそう。猿川空音って言うのに会ったら、伝えて欲しいことがあるんだ

けど」


「誰ですか?」


「その内分かるわよ。兎に角お願いできる?」



会う確率なんかしれてると思うんだが・・・



「え、えぇ・・・」



承認とは受け入れ難い返事を聞くと、彼女はキラリと八重歯を見せて、不気

味に舌で舐めながら言った。



「『近い内にあんたの首を頂くから』って伝えて置いてね、よろしく」



おっと、俺の耳がおかしいのか?


首を頂く?


キラー(殺人)宣言?


+αで薄気味悪い笑顔?


そんな簡単に人生の終焉を迎えちゃって良いんですかね?



「耀獅ウん?先程からブツブツと何を?」



零次が怪訝そうに言った。


最近、独り言が口に出ているらしい。


危ないと思う、うん・・・



「ま、内容はともかく、伝言があった事は伝えておきますよ。尤も、名前も聞

いていないんで伝えようも無いですけどね」


「あ、それもそっか・・・」



しまったと言わんばかりのとぼけた顔でこちらに振り返る。



「あたし、犬山 零奈(いぬやま れいな)って言うの」


「あの・・・」


「何かしら?」


「もしや、生徒会の人とか言わないで下さいよ?」


「あら、何で分かったの?」



うーん・・・ 


段々慣れてきたな・・・ 


もはや出てきて当たり前みたいな・・・ 



「それじゃ、次の授業あるからよろしくね」



犬山さんはそう言い残して軽快に走って行った。


つか、知り合いなら自分で言ってくれれば良いのに・・・



「3院生っていうのは、一方的に喋る人ばかりなんですかね・・・」



零次が隣でポツンと呟いた。


そういえば、零次が会ったのは実真さんと巳島さんとさっきの犬山さんだったな・・・ 


また、濃い人達だけに会ったものだ。


そう思っても仕方ないだろう。



「いや・・・ 多分お前の運が悪いだけだと思う・・・」


「俺の運ですか・・・?」


「多分な・・・」



半ば諦めモードで、俺達は教室に帰った。