「では皆さん。怪我の無いように40日間を無事に過ごして下さい」



理事長の挨拶は1学期の終わりを示す。


学期末のテストも終了し、大掃除や避難訓練なども流れるように終わった。


あ、そうそう。

期末テストの結果と言えば、9教科あったのだが・・・ 



1位─甓尖 耀氏@(C組)

1位─幸田・ルミナ・恵子 (C組)

1位─焔 脩子 (C組)

(五十音順)


4位─道田 麻恵 (E組)



まぁ、そんな結果である。


この間も思ったが、4位の道田さんってどんな人だろうか・・・ 

まぁいいや。


しかし、今回それよりも気になったのが・・・ 



7位─魅堂 零次 (C組)



何と、零次が10位以内に入っていた。


これには一同が驚いた。



15位─麻川 絵里 


38位─米谷 由子 



後、さり気なく上位にいるのもいた。

ついでに・・・ 



115位─栗橋 美香 


204位─車岳 蓮也 



何?それよりも下の人間が気になるって?

じゃぁ、ちょっとだけ・・・ 



同立240位─青田・羽川・桃野 



補足だが、今回の受験者数は1人が高熱の為受験できず、合計242名です。


もうお解かりですね?

3人とも最下─



『ビューン!!』



「うわっ!」



どこからともなく長さ3mほどの石槍が飛んできた。


まぁ、何はともあれ・・・



明日から夏休みです。




::第13話 - story1::




HR終了後、提出用のレポート用紙を運んでくれと頼まれ、束になっている用紙を

抱えて職員室に向かう。



「ごきげんよう、甓尖様」


「ん?あぁ、夜叉小路先輩」



呼び止められたかと思ったら、夜叉小路先輩が立っていた。


今日はいつもの取り巻きさん達がいない。



「そのような堅苦しい呼び方をされなくとも『麻美』でよろしいですわん」



氷点下30℃にまで陥りそうな言葉を言いながら頬を赤らめてくねくねと体をくねら

す。


ここにも変態がいたか・・・



「・・・分かりました『夜叉小路先輩』」


「うふ。お照れになって、意外とうぶなお方なのですね」


「はぁ・・・」



俺としてはあまり関わり合いたくない人ベスト5に入ってるんだよな・・・ 


ちなみに1位はぶっちぎりで真正さんだ。



「最近暑い日が続き、御体の方にも差し支えがございましょう」


「えぇ、まぁ・・・」


「そこで我が夜叉小路家の所有する避暑地にご招待したいと─」


「おー!いいじゃん、行こうぜ耀氏I」



突如、蓮也が俺の肩から顔を出した。

って言うか、いつの間にか負ぶさっている。



「な、何ですか!?あなたは!」


「ん?俺ですか?耀獅フ親友の車岳蓮也っつーモンですよん♪」



ビとVサインを突きつける。



「な、名前など訊いておりません!第一、誰もあなたを誘ってなど──」



「あれ?カワラっち、まだこんな所にいたの?何だ、レンもいたのね」



更に美香が湧いて出てきた。


夜叉小路先輩にすれば一番厄介な人物に嗅ぎつかれたと言えるだろう。



「何だよ、俺はついでかよ」


「誰もそんな事言って無いでしょ?で、何してるの?」


「そうそう、聞けよ栗橋。この人がリゾートに連れてってくれるってよ」


「えぇ?夜叉小路がぁ?」



そういう事を眉をひそめながら言うなよ・・・



「だ、だから誰もあなた達を誘ってなどいな───」


「美香ー!」



ヨネがしかめっ面で美香の後から付いてきた。



「もー!職員室行くからついてきてって言ったじゃない!」


「ゴメンゴメン、すっかり忘れてた」



プンスカと怒るヨネに悪びれた様子も無さそうな謝罪をする美香。



「もー!で、何の話?」



表情がパッと変わる。


俺の周りには情緒不安定な奴が多いらしい。



「夜叉小路が別荘に連れてってくれるんだって」


「だからあなた達を誘った覚えはないと言って・・・って、年上に向かって呼び捨て

とは何ですか!!?」



運の悪い人はとことん悪いと聞くが、ここまで極端な人も珍しい。



「え〜!?ヤッタね、新しい水着買いに行こっと!」



ヨネは踵を返して上機嫌で走り去った。

職員室に用があるんじゃなかったのか?



「んじゃ、あたしも部活行くからカワラっち、後で連絡ちょうだいね〜」


「耀氏A俺トイレ行くから先に教室帰ってて」



3人は、嵐のようにやりたい放題で去っていった。



「クッ・・・」



夜叉小路さんの方から小さな唸り声が聞こえた。



「すいませんね、先輩」


「いえ・・・」



うわ、スッゴイ不満そうな声。


先輩はフー・・・と自分を落ち着かせるように溜息をつく。



「仕方ありません・・・ では、先程の3名を特別に招待いたします」


「あ、ちょっと待って下さい」


「何でしょう?」


「非常に申し訳無いんですが、後3人ほど追加なされてた方が・・・」


「え?」 




─当日、ヘリポート。



「いや〜、いい天気ね〜」


「そうだね〜」


「暑ぃ・・・」


『コクン』



その後、美香によってルミナと零次と焔の3人にも連絡が行き渡り、今に至る。



「・・・・・・。」



愕然とした様子の夜叉小路先輩。



「度々ご迷惑かけます」


「い゛え゛・・・」



おー、テンション激減。



「と、とりあえずご案内致しますのでヘリの方にお乗り下さい・・・」



顔が大分無理してるな・・・ 


ま、仕方ないかな?

諦めて貰おう。



かくして一行は、都心を離れ、長野県は軽井沢にある別荘地に到着した。



「すごーい!空気が凄く新鮮だね、ヨウライ君」


「あ、あぁ。そうだな・・・」



白のワンピースを纏ったルミナと太陽が死ぬほど似合っている。


正直、直視できない位眩しい。




「ううぅ・・・」



一方で、零次が吐き気に苛まれていた。


本人曰く、ヘリと船はダメなんだと。

飛行機はいいのかと。


そんな零次の背中をさすって介抱する焔。

微笑ましい光景だ。



「どうです?最高のロケーションでしょう」


「そうですね、ただ雲のひとつやふたつは出て欲しいところなんですが・・・」



天気は快晴そのもの。


しかし、雲ひとつないので直射日光が厳しい。



「では、早速別荘の方に向かいましょうか。実は、この道の先にある林を抜けた一

帯は、全て我が夜叉小路家が所有しているんですの」



胸を張って大威張りする夜叉小路先輩。



「そうやって言うから反感買うのよね」



最後尾にいた美香がポツリと呟いた。


本人はそのつもりだったのだろうが、先頭を歩いていた俺達がハッキリ聞こえてい

たのだ、当然先輩の耳にも届いたのだろう、耳がピクリと動いた。


おそらく表情は引き攣っているに違いない。


俺は零次に美香を黙らすよう、目で合図を送った。



『ベチッ!』



すると、後ろから鈍い音がしたのでチラッと振り返ると美香の口にガムテープが貼

られていた。



(うわ・・・)



ちょっとやりすぎじゃないかと思いつつ、前に向きかえる。



・・・・・・。


あれ・・・?


さっきから何かが足りないと思ったら、ヨネの姿が見当たらないじゃないか。


あれだけ張り切ってたのにどうしたんだ?



「ルミナ」


「なぁに?」


「ヨネは?」


「あ、米ちゃん?」



すると、ルミナの顔が少し残念そうになった。



「今朝、高熱出したって連絡があったよ」


「熱だしたの?」



不運だな、しかもよりによって今日とは・・・



「楽しみで興奮しすぎたんだって」


「おいおい・・・」



ある意味、一番悲惨な子だな。


仕方がない、ヨネの分まで楽しんでやるか。



10分ほど歩くと、林を横切るような道に入った。


木漏れ日が風に揺れる木々の音と合って気分的にも非常に涼しい。


野鳥の鳴き声がなんとも自然を感じさせ、さらに、森林独特のあの匂いが鼻孔をく

すぐる。


なんともいいものだ・・・

いつものいざこざを少しばかり忘れられる。


俺は歩きながら感慨深くゆっくりと息を吐いた。



「ん〜・・・ 都会じゃ味わえないわよね、こんなの」


「オマケにこんなに快適とは、冷房いらずだな」



美香と蓮也が珍しくのほほんとした顔になっていた。



『パシャッ』



「・・・クスッ」



そんな二人の腑抜面をしっかりとデジカメに収めた焔。



「お?それは最新の高画質手ブレ補正のデジカメ?」



『コクリ』



わきあいあいの零次と脩子を見たルミナが耀獅フ腕に自分の腕を絡ませた。



「ん?どうかした?」



ルミナの急な行動に俺は彼女に訊ねたが、ルミナはふるふると首を横に振る。



「???」



俺にはルミナの考えてる事が解らなかった。



「それにしても、仲がいいな。あの二人」


「うん・・・」



俺の問いかけに少しつまらなさそうな返事が返ってきた。



「????」



こういう場合はどうすればいいんだろうか・・・


分からん。



「さぁ、もうすぐ別荘に到着いたしますわ」



すると、前方にロッジが見えたきた。



「お〜、凄い景色」



いくつも立ち並ぶロッジの後ろに、雄大な山々がその連峰を連ねていた。



「そうでしょう、そうでしょう。しかし、この景色もまだまだ序の口・・・ もっと凄い物を

お見せいたしますわ!」



どこからか取り出した扇子を広げ、高笑いする先輩。


気のせいか、鼻が伸びてる上に先がとんがって見える。

一般的に『天狗』、『鼻高々』とはこの事なのだろうと改めて実感した。



「んな事はどうでもいいからさ、早くロッジに案内してよ」



美香の空気を読まないセリフによって、先輩の高々と伸びていた鼻が根元からポ

キーンと折れる。


いや、実際は折れてないんだけど・・・

何か、そう感じ取れただけ・・・


言葉のあやですよ、言葉の。



「ロッジは人数分はございますので、一人一軒ずつお使い下さい」



少し投げやり気味な口調になった。


先輩としては、うるさい美香に早くエサを与えて静かにさせたいのだろう。


案の定、美香はすぐさまロッジに飛び込んだ。

やれやれ・・・ 



「ねー!広すぎて一人じゃ勿体無いよー!」



美香がロッジの窓から顔を出して吠える。


おいおい・・・

どれだけ文句言えば気が済むんだあんたは・・・


傍若無人のごとく次から次へと・・・ 

いい加減に先輩が気の毒だぞ。



「それと、各ロッジには専属の召し使いを一人ずつ配属しておりますわ」



美香を完全無視で俺達に説明を続ける先輩。

無難な選択だろう。



「あの〜、質問いいですか〜?」



ルミナがおそるおそる手を挙げる。



「何でしょうか?」


「せっかくみんなで来てるんだし、一緒のロッジでもいいと思うんですけど・・・」


「同感」



俺もルミナの意見に賛成だと手を挙げる。



「耀獅ェ言うなら」



ハイと蓮也。



「耀獅ウんとルミナさんが言うなら」



ハイと零次。



「零次さんが言うなら・・・」



最後に焔が手を挙げた。


別に次々にそんな事しなくても・・・ 



「それも正論ですわね、宜しいですわ。では中心であるこのロッジに致しましょう。

誰か」



先輩がパンパンと手を叩くと、黒スーツの人がやって来た。



「お嬢様、お呼びでしょうか?」


「今日キャンセルになっていたお客様に、残りのロッジを提供なさい。勿論、お詫び

を込めて無料でお通しすること。宜しいですわね?」


「畏まりました、直ちに」



わざわざ予約してた客をキャンセルさせたのかよ・・・ 


この人も後先考えないで行動するよな・・・ 



「では、明日に軽井沢の名所である大滝にご案内します。今日はゆっくりと休みま

しょう」



今日はひとまず、ロッジで過ごすことになった。