夏も終わりになりかけた8月下旬。
夏休み最後の思い出として、沖縄の東に位置する太平洋に浮かぶ小さな島に一同
で遊びに出かけた。
遊んでばっかだな・・・
::第14話 - story2::
しかし、課題もすべて終わっているし、残りの休みを有意義に使わない手もない。
と、話を持ちかけたのは俺からなんだけどね。
空港に降り立った俺達を真っ先に出迎えたのは意外・・・
いや、当然といえば当然なのか・・・
『カッッッッッッッッ!!!!』
雲1つない空に、その姿を頑として留め続ける太陽が、これでもかと言うぐらいに照
り付ける。
暑い!しかし暑い!!
これじゃぁ、熱中症になっても文句言えないなっていうぐらいに照りつける。
「ったく、あっついわね〜〜」
美香が参った表情で太陽を恨めしそうに眺める。
「でも、風が気持ちいいよ。ね?脩ちゃん」
「えぇ・・・とても・・・」
才女2人組みは、何ともまた太陽の似合う格好な事で・・・
見てるこっちも涼やかですよ。
空港で買ったアイスを口に咥えながら思った。
「あ゛〜、それはそうとして暑いな」
と、蓮也が被っていた帽子を外した。
それをみて蓮也以外の全員が驚いた。
「ああああ〜〜〜!!!髪の毛が、オレンジ(薄いめ)になってるーーー!!!?」
第一に叫んだのは美香。
俺は驚きの余り、口から言葉が出てこない。
「でもまぁ、茶色よりはそっちの方がお前らしい」
「うん、私もそう思う」
ところが、零次とルミナは至って冷静な解釈を施す。
なんという適応能力の早さだろう。
もしくは、蓮也に興味がないのかどっちかだ。
7割方が後者だな。
それに、驚いたのは俺と美香だけのようだし・・・
「茶色だと、日光吸収して頭が熱くなるんだよ。こっちの方が涼しげでいいだろ?」
どっちも暖色系だから変わりはないと思うんだけど・・・
まぁ、本人が気に入ってるんだし、別にいいか。
似合ってないわけじゃないし、色的には普通に合っている。
その後、10分ほど雑談をしていた。
「ねぇ、ところで何時になったらここから移動するの?」
ようやく美香がその事を口に出した。
「確か迎えが来るんじゃなかったのか?中々来ないけど」
「あぁ、この島に知り合いのオッサンがいるんだ。中々来ないけど」
「へ〜、コネがいいのね。中々来ないけど」
コネ・・・ねぇ・・・
なんだか頭が痛くなってきた。
「どんな車だ?」
「多分・・・ オープンカーだよ、俺らは」
「“俺ら”は?」
『パッパーー!!』
その時、遠くの方から派手なクラクションを鳴らして、中々来なかった迎えの車、黒
光りする4WDのクルーキャブが猛スピードで走ってき、豪快に俺達の前で止まった。
「な、何よ一体・・・」
目の前で起こった不可思議な事態に困惑する美香。
やれやれ、このオッサンだけはどうもな・・・
「久しぶりだな耀詞N!!」
車内から大声で叫びながら、オッサンが勢いよく飛び出してきた。
「驍慈おじさん、そんな近距離で叫ばなくても聞こえてるよ・・・」
盛大に唾を撒き散らしてくれたこのオッサンの名は豊嶌 驍慈(とよしま たけふさ)。
親父の友人で稀に見る娯楽人。
4年ほど前からこの地に住んでいるのだが、その資金というのも、カジノで儲けたあ
ぶく銭らしい。
つまり親父とは全く正反対の性格だが、何故か馬が合うという何とも謎な話だ。
「さぁさぁ!乗った乗った!甓尖から連絡があってな。くれぐれも粗相のないようにと
頼まれてんだ」
無理やり乗せようとして、そのセリフが出てくるか?
「あれ?でも、座席が4つしかないよ?」
ルミナが車内を見て首をかしげた。
「そうとも、シートにはお嬢さん方だ。野郎共は荷台だ」
だろうな、俺もそんな気はしてたが。
「むしろ、俺はこっちの方が好きだけどね」
蓮也が先陣を切って荷台に飛び乗った。
「全く・・・ 言動が不一致すぎてため息も出ませんよ」
やれやれと言った表情で零次も荷台に飛び乗る。
気持ちは分からんでもない。
「まぁ、そう言うな零次。アレでも一応、宿泊の世話になるんだ。テンションの高い添
乗員だと思えば・・・」
「思えませんよ」
「だよな」
驍慈のオッサンの運転のもと、座席にルミナ達、そして後ろの荷台に俺達を乗せた
クルーキャブが急発進で目的地に向かう。
スピーカーから流れる洋楽を聴きながら、海沿いの道を軽快に走るクルーキャブ。
海の潮風が何とも心地良い。
「爽快ですね」
「あぁ、こんなのもいいだろ」
「なぁ、車の屋根の上とか乗ったらもっと気持ちいいんじゃねぇかな?」
蓮也が目を煌めかせながら訊いてきた。
「だろうな、乗ってみろよ」
よしっ!と、よじよじと屋根の上によじ登る蓮也。
「おー!スゲー!」
向かい風を真正面から受けてテンションが上がる蓮也。
どうでも良いけど、そのままだといずれ警察に捕まるぞ。
「おい、小僧ー!はしゃいで屋根を凹ますんじゃねぇぞー!」
オッサンが運転席から顔を出した。
って、オッサン前見ろ前!!
危ねえからマジで!!
その後、何度も胆を冷やしそうになったが、無事豊島邸に到着した。
この島の土地も安く、カジノでボロ儲けしたお陰か、豊島邸は7LDK、庭付きという
少し大きめの家だ。
この家でオッサンとオッサンの奥さん、聡美(さとみ)さんが二人で暮らしている。
空いている部屋は、来客用にと作ったそうで、俺も小さな頃に何度かここに足を運
んだ記憶がある。
「まぁ、耀獅ソゃん!久しぶりね、見ない内に大きくなって」
家に入る前に、中から聡美(さとみ)さんが出迎えに来てくれた。
「お久しぶりです、聡美さん。どうでもいいですけど、16にもなって『ちゃん』とか止
めましょうよ」
相変わらずの呼び方だが、皆の手前少し恥ずかしい。
「あら、いいじゃない。私の中ではいつまでも『耀獅ソゃん』よ」
「あ、そうですか・・・ そうだ、紹介しときますね。俺のクラスメイトです」
「「「お世話になりまーす」」」
「あら、元気そうね。ウフッ」
「お前たちにも改めて紹介しておく。宿泊の世話になる豊嶌驍慈さんと、奥さんの聡
美さん」
聡美さんに皆を紹介した後、体を反対に向けて、今度は皆にオッサンと聡美さんを
紹介した。
「「「よろしくお願いしまーーす」」」
「元気で良いわね。おばさん達もそのパワーを貰っちゃうわね」
「ははは、聡美。若作りはそろそろ苦しぐふぉっ!!」
オッサンの腹部に鋭いエルボーが突き刺さる。
う〜ん・・・
オッサン、そりゃアンタが悪いよ。
「さ、どうぞ。部屋はたくさんあるから自由に使って頂戴ね」
顔に血管が薄らと残っているが、聡美さんは笑顔は変えずに俺達を案内してくれた。
皆が二階に上がったのを見て、俺は聡美さんに改めて挨拶した。
「すいません、急に大人数でお邪魔しちゃって・・・」
「いいのよ。そんな事より、こうやって耀獅ソゃんが立派になった姿を見せてくれた
だけで、おばさん十分なんだから」
「ありがとうございます」
俺は小さく頭を下げた。
「ほらほら!折角遊びに来たんだから、海に行ってらっしゃい。帰ってくる頃に、夕
飯作って待ってるわ」
「分かりました、行ってきます」
聡美さんが顔一杯の笑顔を見せるもんだから、こっちが先に折れてしまう。
「おーい、海行くぞー」
「「「おーーーー!!」」」
異常なハイテンションで豊嶌邸を出て、20mほど歩いた直ぐそこの海にたどり着い
た。
「わー、すごーい!」
「誰もいねー!」
「まぁ、(ほとんど)プライベートビーチみたいな物だからな」
早速、ビーチのすぐ側に設置されている更衣室で水着に着替えてビーチに足を踏
み入れた。
真っ白なビーチに肉眼で見えるぐらいに透き通った海と珊瑚礁が目を眩かせる。
海岸沿いに根付くヤシの木も太陽の陽を燦燦と浴びて、青々と茂るその葉をゆらゆ
らと上下に揺らしていた。
時折、揺れる葉の間から、陽の光が木漏れ日として俺達の上に降り注ぐ。
あ〜、南国だね〜。
俺は荷物を置くため場所を確保のため、厚めのシートを敷いて大き目のパラソルを
立てながら思った。
「おい、はしゃぐのは自由だが、海に入る前に体操ぐらいしていけよ」
隣で一緒に手伝ってくれてる零次が二人に喚起した。
「あぁ、分かったー」
スポーツをしているので、危険性を知っているのだろう。
蓮也と美香は素直に準備運動を始める。
「さ。準備も出来たし、俺達も行くか」
「そうですね」
荷物置場の用意ができたので俺達も準備体操に入ろうとした。
「あ〜、カワラっちもミッ君も見てあげないの?」
美香が、腰に手を当ててニヤニヤと笑う。
「何が?」
「ルミナっちと脩子ちゃんの水着姿よ〜」
なっ!?
急に何を言い出すんだコイツは!!
「この日の為に、わざわざショーウィンズまで買い物に行ったのよ?」
興味を持たない俺達をみて、美香が残念そうに洩らした。
別に興味が無いわけではない。
逆に興味津々なぐらいだ。
いやいや、何言ってるんだよ俺は。
ちなみに、ショーウィンズとは市街地にある縦1kmに伸びるアーケード街の事であ
る。
天候を気にせずショッピングができるので、老若男女、幅広い年齢からの支持を得
ている。
百合華もお気に入りの場所だそうだ。
「何?栗橋のも新品な訳?」
蓮也が隣でエアーボートに足踏み空気入れでシュポシュポと空気を入れながら訊
ねた。
「そう。水着もさる事ながら、このプロポーション。どうよ?」
美香は白地にトロピカルプリントが施されたホルタービキニを付けて、何かしらのポ
ーズをとる。
「うん?ここら辺と肉付いてんじゃねぇのかブッッッ!!」
尚も空気入れの作業を続ける蓮也が美香の腰についた肉を掴もうとして顔面にエ
ルボーを喰らった。
アホ・・・
まったくと言っていいほど無神経だな。
「まったく・・・ 少しは乙女心ぐらい理解しようとしなさいよね」
「乙女心ねぇ・・・」
零次が怪訝そうに美香を見る。
零次からすれば、自分の目にはそうは映ってないらしい。
「ミッ君、そんな目で見ないでよ。あたしが勘違いしてるみたいじゃない」
それはともかく、自分で言うだけの事はあって、見事なプロポーションである。
バレーのお陰か余分な脂肪がついていないので、腕周りや腰周りは非常にスリム
だ。
・・・・・・。
ヤベー。
何だかいらない方向性に走ってる気がする・・・
あ、変な誤解招いてそうだから言っておくが、水着とかに関する入れ知恵は全部百
合華だからな。
あいつの買い物に付き合って覚えただけなんだからな。
分かったな、読者諸君。
くれぐれも変な意味は含んでいないって事だけは覚えておいてくれ。
「ホラ、ルミナっちも脩子ちゃんも着替え終わって出てきてるわよ」
美香が横を向いて指を指した。
『『ゴクリ』』
俺と零次の間に妙な緊張感が芽生える。
ゆっくりと後ろを振り返ると─
「あ、あの・・・ 私、こういう事は初めてで・・・」
「エヘヘ・・・ やっぱり派手だったかなぁ。この水着・・・」
そこには、紺色のシンプルなワイヤーホルターのビキニを着た焔と、白と水色のボ
ーダーにパレオを巻いた水着姿のルミナが二人そろって恥ずかしそうに立っていた。
「「・・・・・・。」」
俺と零次の目は完全に二人の姿に釘付けとなっていた。
まるでぐうの音も出ない。
俺らがずっと見ていたからだろうか、ルミナと焔が更に顔を赤くして手で体を隠す。
「零次さん・・・ そ、そんなに見ないで下さい・・・」
「ヨウライ君、ジッと見られたら恥ずかしいよ・・・」
「あっ!ご、ごめん・・・」
「す、すまない・・・」
互いに気まずい雰囲気が出来上がってしまった。
「アホクサ・・・ 馬鹿な事やってないで、さっさと遊ぶわよ」
魚のような目で呆れ果てた美香がケッと言い放った。
「ま、美香の言う通りだ。体操だけして俺達も行こう」
「うんっ」
美香の台詞に俺達4人は若干イラッとしたが、気をとりなおして早速海で遊び始め
た。
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