「うわー!うわー!校内の地図看板の場所何処だっけ!?」



生徒会室が分からず、そのための校内地図看板を探し回って10分。


見つからない。



どうしよー!!




::第15話 - story2::





廊下を右往左往している間にも時間は刻一刻と過ぎていく。

すっかり立ち往生してしまった。


体育館探し(第2話・#2)と同じような状況になってるなぁ・・・



そうだ・・・

職員室いって聞けば済む話じゃないか。


うわー!無駄な時間過ごした!


足を行き先の職員室へと向けた時だった。



「甓尖君」



聞き慣れた声のその先に流頴娃さんが立っていた。



「あっ、流頴娃さん」


「探しましたよ」


「すいません、お手数かけさせました」



探される羽目になるとは・・・


一言謝って、流頴娃さんと並んで生徒会室に向かう。



「ところで、何の用事ですか?」


「実は、真に申し訳ないんですが・・・」



流頴娃さんは表情を曇らせるだけで、続きを喋らない。



「と、とにかく生徒会室まで・・・ 来て頂ければ解りますので・・・」


「はぁ・・・」



珍しいな、流頴娃さんがこんなにも口篭もるなんて。


とりあえず、大人しく流頴娃さんの後に続くことにする。


すると、場所はどんどんと見慣れた場所へと移動する。

意外にも1階の掲示板付近だった。



「こんな所に・・・」


「聖クライアンヌ女学院の生徒たるもの、生徒会室の場所を覚えておくのも大事で

すよ」



流頴娃さんは忠告ともとれるセリフを俺に言いながら、生徒会室の扉を開ける。



「どうぞ」


「失礼します」


「あら、甓尖君。こんばんは」



中にいたのは汰城沢先輩で、一人で黙々と書類を書き上げていた。



「あ、汰城沢先輩。お疲れ様です」


「どうしたの?生徒会室には多分無縁のハズなんだけど・・・」



ええ、それは脳に穴が開くぐらい自分でも理解してますよ。



「私が呼んだんです」


「奏さんが?」


「えぇ、少し彼の力を借りたくてね」



俺の力?



「へぇ・・・ 奏さんが誰かの力を借りるなんて珍しいですね」



汰城沢先輩は本当に珍しそうな表情で言い返していた。


でも、なんとなく解る気がする。


勾野さんの世話とか、夜叉小路先輩の世話とか・・・ 

色んな人の面倒見てそうだもんな。


それにしても、生徒会執行部が14人もいて、残ってるのが2人とかありえないだろ、

普通。



「他の人達はいないんですか?」


「あぁ、それぞれに担当部署を設けていまして、そちらの方に向かわせてます」



あぁ、なるほど。道理でいないはずだ。

まぁ、いたとしても何もしてないだろうけど。



「でなければ、サボるのが出てきますので」



だろうな・・・

虎と竜と羊と猿と犬あたりだな、怪しいの。



「あれ?そう言えば勾野さんは?」


「会長でしたら生徒会長室で業務に当たっています。ちなみに、隣の部屋ですけど」


「あ、案外近いんですね・・・」


「生徒会長室と生徒会室は、中からでも繋がっているので行き来は自由にできます

よ。入ってみますか?」


「いや、遠慮しときます・・・」



この人、解ってて言ってるんじゃねえのかな?

うっすら笑ってるし。



「さて、貴方をお呼びしたのは他でもありません。少し手伝って頂きたいことがある

んです」


「何ですか?」



すると、流頴娃さんの顔が若干困惑したようになる。



「実は、体育祭に使う大道具の注文なんですが・・・」


「え?注文?それぐらい、俺に頼まなくったって・・・」


「あ、いえ・・・ 実は大道具の注文は会長の仕事なんですが、扱っている業者の人

が男性で・・・」



・・・・・・。


誰かに代わってもらえ!!


結局、他の生徒会の人も手一杯で俺がやる事になった。



「貧乏くじ多いなぁ・・・」



俺は小さく呟いて、学校を後にした。



「へっくしゅん!」



夜風が少し肌寒かった。





それからの月日が流れるのは早かった──




体育祭まで残り4日──



「誰だー!入場門書いたのはー!!『入場門』が『人場門』になってるじゃないかー!!?」


「げっ!テントが風でなぎ倒されてる!!」


「先生ー!プリントにミスがぁー!」


「見逃してぇ〜!」


「玉入れの玉って布で出来てるんだ」


「アホな事言ってないで手伝いなさいよ、辰美!」




体育祭まで残り3日──



「何ぃー!?保護者データを一人分入れ忘れてたぁー!?」


「車岳君、大変!学院章看板にヒビが!!」


「看板の一部、総取り替えだと!?」


「早く!発送の締め切りは今日の3時までよ!!」


「間に合わないーー!」


「笹川先生、体育祭当日は校門で保護者本人確認しますので、配線の長さとかの

確認をよろしくお願いしますねー」




体育祭まで残り2日──



「チクショー、せっかく看板が終わったと思ったのに!」


「会長、まだ大玉が届きません!!」


「何ですって!?」


「のりは?ホッチキスは!?芯がぜんぜん足りないのよ!」


「甓尖君!!笹川先生が保護者データを入れたノートパソコンごと転んじゃったー!」


「何だって!?データは!?」


「ダメ!全部飛んじゃった!」


『バターン!!』


「きゃぁっ!甓尖君!?しっかりして!」




体育祭まで残り1日──



「よっしゃぁ!看板直ったー!」


「入退場門も完成・・・ 旗柱も設置完了・・・ 柵・本部・トラック・空砲も良しと・・・ 

ところで耀獅ウんは?」


「パソコンができる人、5・6人集めて保護者管理データの再構築やってるんだって」



『カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ』



「頑張って!甓尖君!」


「あんたは少し黙っててください!!」


「甓尖君、Bグループ完成したよ!」


「Cグループも完了!」


「Aも終わったわ!」


「D・Eも終わったよ!」


「お疲れ様です!USBメモリにデータを移して俺の所に!」


「「「了解です!!」」」


「よし!後は全部繋げて終わりだ!時間は!?」


「午後4時49分よ!」


「残り11分か・・・ やってやる・・・!!」


「頑張って!甓尖君!」


「だからあんたは黙ってろー!!!」




そして当日── 



「う゛〜ん・・・ が、か゛ら゛た゛が・・・」



そこには、心身共に疲れ果ててベッドの上で呻く自分の姿があった。





──ヤベ、思い出すだけで吐き気が・・・


挙句の果てに、朝っぱらからこの場所だ。

誰か休ませてくれ。


それに・・・ 

今日までの一週間、まともにルミナ達と会話さえしていない。


零次や蓮也とは大道具作成の時に話・・・と言っても寸法等の指示だけど、話はして

いる。


だが、ルミナや美香、焔達とは顔すら合わせれていない。



あ、そうそう。言い忘れてた事がひとつ・・・


あれから(第14話・#6)、俺はルミナと正式に付き合い始めた。

付き合い始めたって言っても、すぐに休み明け実力考査の勉強の為、遊んだりして

ないけどな。

ルミナの家に行って一緒に勉強をしたぐらいだ。


それに、この事はまだ誰にも言っていない。

勿論、家族にもだ。


どっちかと言うと、俺は家の方がいいづらいんだが。

まぁ、誰とは言わないが・・・ 



はぁ・・・ 

想いを伝えたと言うものの、前より二人でいる時間が少なくなっているような気がし

てならない。


俺は頬杖をついて明後日の方を見ていた。



『さぁ!プログラム1番の全校体操が終わった所で、早速競技の方に入っていきま

しょー!!』



コイツ、元気だなー・・・



『まずは学年対抗、女子400m予選です。第4レースの内、午後に行われる決勝に

進む12名を選出します』



すらすらと流れを解説する品吉。


饒舌でいいのはいいんだが・・・ 

広報部の活屋先輩と同様、一癖あるからなぁ、コイツ。



『甓尖さん、いよいよ競技が始まりますね』


『そりゃそうでしょう。放課後、グラウンドで練習する光景を何度か目にしましたから』



すると、品吉の口の端がニヤリと吊り上がった。



『そうですかそうですか。出場する選手の皆さん、お聞きになりましたか?甓尖さんは

ちゃんと分かってるようですよ〜』



あん?どういう事だ?


しかし、何故か生徒席の方からは歓声が上がっていた。



『あ、あの・・・』


『さて!第1レース、2院生の出場選手を紹介します』



どういう事か説明して貰おうかと思ったら、それを遮るかのように選手紹介に移る品吉。


明らかに意識してた様に見えたけど気のせい?



『さて、甓尖さん。400m走の攻略をどう見ますか?』


『格闘技の試合のリングサイド実況じゃないんですから・・・ そうですね、敢えて言う

ならポイントは200m過ぎ。つまり一周回り終えてから、どう勝負に出るかだと思い

ますよ』



俺は可もなく不可もない返答を返した。


我ながら味気ないね。



『お見事!見て下さい、生徒席を。メモする生徒で溢れ返ってますよ』


『・・・・・・。』



どう反応すれば・・・?



『さっ!準備が整ったようなので早速、第1組からレースを始めましょう!』



俺らの息が合わないまま、第1レースがスタートした。



「俺、ちょい手洗ってくる」


「あ、はい。いってらっしゃい」



あんまりレースには興味無かったので、俺は席を外した。



「ふい〜・・・」



や〜っと一息つけた。

俺は歩きながら「ん〜」と背を伸ばす。



「お兄ちゃーん!」


「ん?」



聞きなれた声に振り向くと、百合華が4人のSPを引き連れてクラ女に来ていた。



「百合華っ!?お前、今日大会じゃ・・・」



予定じゃ親父とお袋しか来れないって聞かされていたのに。



「エヘヘヘ・・・」



ニカッと八重歯を見せながら笑う百合華。



「嘘か・・・?」


「エヘヘヘヘ・・・」



『ビスッ!』



ごまかし笑いをし続ける百合華に、無言で一発チョップを入れておいた。



「痛ーい!もうっ。照れなくていいのに」


「誰が照れるかっ!そんな事より、よく入れたな。セキュリティ厳しいんだぞ?」



そう、俺があれだけ頑張って作ったセキュリティチェックプログラムだ。


親父とお袋しか登録してないから、元来百合華は入れるはずがないのだ。



SPもな・・・



「SPと一緒にいたら、何も言わずに通してくれたよ?」



セキュリティホール発見!!?



「どんな人だった?」


「え〜とね、確かね、眼鏡かけた女の人だったよ」



確かクラ女の教師が担当してたからな。誰だろ。


原因追求して俺の努力返せって言ってやる。



「髪にウェーブがかかっててね」


「ほぅ」



俺は脳内でモンタージュをしていく。


生憎、全ての先生の顔と名前は把握できてないから、必然的に知ってる先生なん

て限られるけど。



「あっ、腕章に『担当 笹川』って書いてた」





担任だった。




「お父さんとお母さんも後から来るよ」


「そっか。それはともかく、SPを4人もいるか?」


「うん、百合華もそう思ったんだけど勝手に付いてくるの」



俺はチラリと百合華の後ろに立つSPに目を向けた。



「“絶対”に安全とは言い切れませんので・・・」



おっ、カッコイイ事言うね。



「まぁいいけど、あんまり目立つなよ、って無理か・・・」



再度SPに目を向けた。


4人のSPは一斉にサングラスを人差し指でクイッと持ち上げる。

何も、そこまで揃えんでも・・・



「ヨウライ君〜」



お、この声はルミナ。



って・・・ 




今の状況でルミナが来たら、いくら何でもマズくねーーー!!???



「あっ!ちょ!百合華!UFO!!」


「いるわけ無いでしょ?」



百合華にピシャリと切り捨てられた。



「ヨウライ君、お疲れ様。・・・あれ?」



もはや俺にはどうする事もできなかった。


今ここに、百合華とルミナが相まみえる事になったのだ。




どうする俺!?