やはりこの学校は大きい。
地図がないと迷うよな。
先ほど先生から貰った校内地図を広げる。
「・・・・・・。」
なんだコレ・・・?
日本地図じゃん・・・
あの先生、ドジったな・・・
とりあえず機嫌が悪くなった俺は、日本地図を握りつぶした。
::第2話 - story2::
「あれっ?ここ、さっき通ったよな」
勘で体育館を探すうちに迷い気味になってきた俺。
10分間校内をさまよい続け、なんとか体育館に到着した。
あやうく、学校で迷子になる所だった。
とりあえず更衣室に入り着替えを始める。
「広いなぁ・・・」
と呟く。
確かに12畳位ある広さだ。
明らかに勿体無いだろ・・・
学校の構造に強い疑問を持ちつつ、渡された膝下まである灰色のハーフパンツと
白の校章の入った少し大きめのTシャツを着て更衣室を出た。
体育館もとても広く、おおよそ二千人は入れるであろうかという広さだ。
一面にバレーボール用のネットが既に立っていたので、今日の体育がバレーボー
ルであると分かった。
「バレーか・・・」
スポーツは一応一通りできるので嫌とは思わなかった。
『カラ~ンカラ~ンカラ~ン』
と、授業の終わりを告げる鐘が鳴った。
「終わったか」
しかし5分経っても女子が来ないところをみるとどうやら着替えは教室らしい。
やがて、ザワザワと声がしだす。
うちのクラスの女子がやって来たみたいだ。
一番初めに入ってきた女の子が「あっ!」と叫びそれに続くかのように他の女子達
が一斉に覗き込む。
「「「「あ~~~~~!!甓尖君だ~~~~♪♪♪」」」」
ドドドドド!と馬蹄のような音をたてて駆け寄ってくる女子達。
「甓尖君も体育受けるの?」
「キャ~!体操着姿もカッコイイ~~♡♡」
「うわっ!すごい筋肉だ~♪」
「スゴ~イ♪♪」
「凄い似合うね~~♪」
うるさい。
「あのさぁ・・・」
「何々?」
「少し静かにしてくれないかな?」
「あ、ゴメンね~。ホラ、みんな。甓尖君が困ってるよ」
「なによ美香。自分だけ~」
「そうよそうよ!」
「そんな事無いわよ!」
「あの・・・」
「え?あ、ゴメンね。何?」
「もう始まってるんだけど・・・授業・・・」
女子達が驚いたように振り替えると体育の先生がピクピクと血管を震わせながら立
っていた。
「あなた達・・・早く並びなさ~い!!」
先生に怒鳴られ俺を取り囲んでいた女子達は一斉に散らばり、整列する。
「先生」
「あなたが甓尖君ね。私は体育担当の山下です」
「よろしくおねがいします」
「では、とりあえずそこに座っていてちょうだい」
「あ、はい」
させてはくれないんですか?
「あなた達!授業は始まっているのですよ!来たら早く並んでいなさい!!」
先生の檄が飛ぶ。
「それでは授業を始めます。礼!」
「「「おねがいしま~す」」」
「さぁ、準備運動をしますよ」
せめて参加させて下さい。
なんかこっちの方が寂しいです。
「あの、先生」
「なんですか?甓尖君」
「俺も混じっていいっすか?」
「ええ。あなたがいいのであれば構いませんよ」
「はい」
俺は列の最後尾に並んで一緒に準備体操を行った。
「では、2列に並んで座りなさい」
このクラスはもともと40人だったので俺が余った。
ふと横を見ると、女子達はなぜかジャンケンをし出している。
「甓尖君は私が見ます」
「「「えぇ~~~!」」」
不満そうに女子達が言う。
ジャンケンの意味はそれかい!
「えぇ~~~じゃありません!!」
またもや喝が入る。
「甓尖君。バレーボールは出来るかしら?」
「はい。一通りは・・・」
「ならいいわ。では皆さん!15分間パスの練習をしなさい!途中でオーバーパス
からアンダーパスに変えてもいいわよ!」
一斉に『ボンッ!ボンッ!』とボールの音が体育館に響く。
だが、ラリーが5回も続かない子達がほとんどである。
続いているのはバレー部の子だろうか、とてもフォームがきれいである。
その子はどうやら先ほど俺の周りに集まったこの一人で、さっきは良く分からなか
ったが長身でスラッと伸びた長い足。
そして、運動しやすいようにだろうか、ショートの髪にしている「美香」という子らしかった。
「甓尖君!行きますよ!」
よそ見をしていた俺に先生はきつめに言葉をかけた。
「はい。お願いします」
『ストンッ・・・』
先生のオーバーはとても滑らかだった。
きれいだな・・・と思いながらも負けじと返す。
『スッッ・・・』
ボールは親指と人差し指で作った三角形のポストの中にキレイに入り、他の3本の
指で添えられるようにして包み込まれ、先生の方向へとまっすぐに返る。
他の子達は何故か俺がするところになるとパスをやめる。
注目の中でキレイなパスを返したもんだから皆も先生も目を丸くしてしまった。
「「「キャ~~~!!スゴ~~イ♪♪カッコイイ~~~!!!」」」
「凄いわ甓尖君。こんなキレイなパスを見たのは初めてよ」
「キレ~・・・」
バレー部であった美香も唖然としながら呟いた。
あっと言う間に15分が経ち、アタックの練習に入った。
勿論、俺は最後な訳で・・・
ネットの高さは2m10cm。
俺の腕を伸ばした時の大きさ、2m3cm。
低い!
そう思いながら最後尾に並んでいた。
「甓尖君っておっきいね」
「え?」
急に声を掛けられた。
「何cmあるの?」
「今、178cmだけど」
「うわぁ~・・おっき~。私なんてまだ162しかないんだよ」
と笑いながら話しかけてくる碧蒼眼のまるでフランス人形のような目を持つ薄茶色
の腰まで伸びている、ロングヘアーの女の子。
「あ、私の名前は幸田・R・恵子(こうだ・ルミナ・けいこ)って言います。ヨロシクね」
「ヨロシク」
俺は微笑んで握手を交わした。
「甓尖君!」
山下先生の声だ。
どうやら順番は俺に回ってきたらしい。
「行きますよ!」
「はい!」
ボールは高く上げられ、俺は精一杯の助走をつけて飛び上がった。
すると、やっぱりネットが低かったのか俺の体は脇の下辺りまでネットから出てい
た。
『ダアァンッッッ!!!!!!』
と、ボールは大きな音を立ててコート内へ落ちた。
「っしょっと・・・」
ボールを拾いに行こうとしたら、またもや
「「「キャ~~~!!スゴ~~イ♪♪カッコイイ~~~♡♡♡♡ キャーーーー!!」」」
と叫ばれる。
うるさい。
「ちょっと、今の凄くない!?」
「脇がネットから出てたよね!?」
さすがの美香もこれには驚かずにはいられなかった。
「スッゴ~~イ!」
目はランランと輝き、正にやられたと言った感じであろうか。
それと同時に何かを決心したような雰囲気でもあった。
そんなこんなで時間はあっという間に過ぎて体育は終わり、俺は着替えて教室へ
と向かった。
「甓尖君」
「んっ?」
俺が振り返るとそこには先程の美香が立っていた。
「どうしたの?何か用?」
「あのね・・・」
「ん?」
「実はあなたにバレーのコーチをして貰いたいの」
「えぇっ!?きゅ、急にそんな事言われても・・・」
「お願い!今日のあなたの活躍を見てどうしても力を貸して欲しいの!!」
必死に頼まれるとどうも断れないのが俺の欠点。
そんな気ではなかったのにハイと言ってしまった俺。
なんとも情けない。
彼女は明るい顔をして喜んでいた。
「本当~~!?ありがと~~!!あ、そうだまだ自己紹介してなかったね。私の名
前は栗橋 美香(くりはし みか)。バレー部でアタッカーをしているの。1年生なんだ
けどレギュラー組みに入っていてもっと上達したいと悩んでたの。甓尖君に教えても
らうなんてとても嬉しいわ」
俺は嬉しくありません。
「まぁ、出来る限りの力にはなるけど・・・」
「それじゃぁ、早速来週くらいからお願いするわね。あ、あとコレ。私の携帯のアドレス
と番号。またメール送ってきてね。詳しい事を話したいから」
「あ、ああ・・・分かった」
「それじゃぁ、また後でね」
彼女はそう言うと走って教室へと帰っていった。
まるで嵐のような子である。
「なんなんだ・・・」
一人残された俺に寂しい風が吹く。
『リ~ンゴロ~ン!』
そこに、始業の鐘が鳴る。
「ヤベッ!遅刻だ!」
俺は渡された紙をポケットに入れ全速力で教室へと向かった。
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