「あたし、こういうシチュエーション困るのよね」
「その言葉そっくりそのまま返そう」
段々とここら辺の空気が重くなっていく気がするのは俺だけであろうか?
「「あのねぇ・・・&あのなぁ・・・」」
「「・・・・・・。」」
ストレスの溜まり方が著しくて凄い。
::第6話 - story4::
「そろそろヤメにしない?」
「そうだな。読者も多少イラついているだろうからな」
「何よ?読者って」
「いや、いい。俺も今、何を言ったのかが分からん」
「現に言ったじゃないの」
「なんか頭に入ってきた。『読者がイラついているって言え』みたいな?」
「なんで疑問形なのよ」
「自信が無いからだろ」
「ふ〜ん」
納得された。
「ほら、いらない事言ってる間に着いちゃったよ」
何ッ!!?
あ、ほんとだ。いつの間に歩いてたんだ!?
謎だらけだ。
着いた場所は聖クライアンヌ女学院学生寮、『ホーリー・メア』。
外観は白のシンプルな建物で、どちらかと言うと、“寮”と言うより“アパート”
みたいな感じだ。
「ほ〜・・・」
「結構キレイでしょ」
美香は誇らしげに言う。
あれ?美香が俺をここに連れてきたって事は・・・
「美香」
「何?」
「もしかして、お前もここに?」
「そうよ」
これは意外だった。
「でも、なんでだよ。ルミナとは中学来の親友だろ?」
そうなのである。
ここは聖クライアンヌ女学院の学生寮だ。
当時中学生だった美香がここに住めるはずが無い。
「まぁ、色々と事情があってね・・・」
あまり触れて欲しくなかったのか、美香は深いため息をついた。
俺もこれ以上追及する事を止めて、「そうか」とだけ呟いた。
「んじゃ、入るわよ」
「あぁ」
「静かにね」
「なんで?」
「ここ、男子禁制だから」
へ〜。男子禁制か。
それならば足音も立ててはならんな。
・・・・・・。
男子・・・禁制・・・?
「それってさ・・・」
「何?」
「超が付くほどヤバくね?」
俺は顔を歪ませながら美香に尋ねた。
「そうよ」
コイツは一体、何を考えているのだろうか・・・
「だから静かにしなさいって言ってんの」
お前のさじ加減だよ。
「わざわざここでする事も無かったんじゃねぇの?」
おそらく無駄だとは思うが、とりあえず言いたい事は言っておこう。
「あ・・・」
・・・・・・。
気付かなかったみたいだ・・・
「まぁ、いいじゃないの」
考えたの5秒だけかよ・・・
「とにかく、静かにね。寮長にバレたら死刑確実なんだから」
そんなに恐ろしい寮長なのか。
覚悟を決めて足音を立てないように、美香の後を追って学生寮の中へと入っ
ていった。
『コソコソコソ』
忍び足で寮の中を歩いていく。
「なんで、こんな事しねぇといけねぇの・・・」
「カワラっち。もうすぐだから辛抱しなさい」
「へーへー」
愚痴を垂れながらも美香の後を足音を立てずに付いていく。
「ここよ」
行き着いた先は、3階の奥から4番目の部屋。
場所的にも非常に中途半端。
「ホラ、ボケーッと突っ立ってないで早く入って」
「はいはい」
美香に背中を押されながら、部屋の中に入る。
「「「「「いらっしゃ〜〜い!!」」」」」
出たな。美香の悪友5人衆。
「うす」
ヤル気の無い声で返す。
「さささ。こっちこっち」
悪友レッドが俺の左手を強引に引っ張って座らせようとする。
「ちょっと!甓尖君はコッチに座るの!!」
今度はグリーンが俺の右手を引っ張る。
「「「2人で勝手に決めないでよ!!」」」
今度は、ブルー・イエロー・ピンクが声を揃えて猛反発する。
うるせぇ・・・
「美香」
ギャーギャー言い争う5人を無視して美香に声をかけた。
「どうしたの?早速嫌気がさした?」
その通りだよ。明智君。
「帰らせて貰う」
俺はすっくと立ち上がって出口に向かう。
「まぁ、確かにあたしでもコレは嫌よね」
美香は両手を頭の後ろに回して壁に凭れながら言う。
「「「「「あっ!!」」」」」
さっきまで口論していた5人衆は俺が出口に向おうとするのを見るや否やピタ
リと口論をやめ、ダッシュで俺の両腕を掴んだ。
「甓尖君、ゴメンね!!」
「私達もう、何も言わないから。ねっ?」
その他の3人もウンウンと頷いていた。
「忠告しておく。もし、また同じような事があれば俺は即刻帰る。分かったな」
5人はゴクンと唾を飲んでゆっくりと頷く。
しかし、この後俺は、予想だにしない体験をする事となった。
─同時刻。
都内のショッピングセンター。
行くのを嫌がっていた百合華は、言った言葉とは裏腹に、十分に買い物を満喫
していた。
「あ〜!コレいいな〜!」
百合華は服を手に取ると、それを掲げて眺めている。
近山さんと古軒さんは何も言わずにピタリと百合華に付いている。
「お兄ちゃん、今何してるんだろ・・・?」
と、百合華がポツリと呟いた。
『お兄ちゃん』と言う単語が出た途端、近山さんと古軒さんはビクッと体を震わせ
た。
そして古軒さんは近山さんに、『余計な事を言うな』と言わんばかりの目線を送っ
た。
近山さんも真剣な表情で頷く。
「お嬢様。耀似lなら、今頃自宅でお勉強をなされているでしょう」
「その通りです。耀似lは、来週に考査(テスト)がございます。それに備えて今頃
は頑張って勉強をしておりましょう」
「へ〜。お兄ちゃん、テストがあるんだ」
「そうです。ですから、お嬢様も耀似lの気を遣ってあげて下さい」
古軒さんは上手く誤魔化す近山さんをみてホッと胸を撫で下ろした。
「それで?お兄ちゃんは何処にいるの?」
「あぁ、それなら今頃、お友達のお住まいに勉強を教えに行って・・・あ!!!」
「ふぅ〜ん・・・ お勉強しにね・・・」
「っっ!!!!」
古軒さんは持っていた荷物を落とし、顔を真っ青にしていた。
近山さんも本当の事を喋ってしまった事に気付き、慌てて両手で口を押さえるが、百合
華にしっかりと聞かれ、結局、俺の作戦は近山さんの一言で、全て水泡に帰した。
