─保健室。



「全く・・・いくらテストだからって、朝の6時まですること無いでしょ?」



保健室の先生が呆れた様子で言う。


当のルミナはベッドに横たわっていた。



「熱もないし、特に以上は見当たらないわね。このままここでテストを受けさ

せるわ」


「そうですか。ありがとうございます」



先生の一言で安心した。




::第6話 - story7::




「まーったく、アンタ何考えてるのよ?」



美香が眉間に皺を寄せて怒鳴る。



「だって・・・」



ルミナが唇を尖らせる。



「で・・でも・・・テスト受けれて・・・良かった・・・」



焔も安堵の表情を浮かべる。



「あ・・・焔さん。ありがとう・・・」


「ううん・・・気にしないで・・・」



2人ともとても穏やかな表情をしている。



「とにかく、この子の事は私に任せてあなた達は早く教室に帰りなさい」


「分かりました」


「それじゃ、ルミナっち。ジッとしてなさいよ」


「お大事に・・・」


「ウン。ありがとう」


「ルミナ、無理はするなよ。テストが終わったら迎えに来るからな」


「ウン☆」



ルミナは嬉しそうな顔で答えた。


まぁ、コレで一安心だな。



「ところでさぁ、カワラっち」



教室に帰る途中で美香が尋ねてきた。



「あん?」


「あんた達、いつから名前で呼び合ってるの?」


「あ・・・」



しまった・・・



「教室と言い、保健室と言い、名前で呼び合うとはいい度胸ね。仮にも学園唯

一の男でしょ?そんな事がバレたらカワラっちは元より、ルミナっちまで被害を

被るのよ?」


「う・・・」



思わず言葉を詰まらせた。


しかし、反論の余地は無い。

美香の言う事が正しいからだ。



「お2人は・・・付き合ってるんですか・・・?」


「おぉい!?」


「あと一歩なのよ。脩子ちゃん」


「くぉらっ!」



余計な事言うんじゃねぇ!



「へぇ〜・・・」



納得せんでええわい!



「こんな事が知れたら、学院中が大騒ぎになるわよ」


「やかましい」



さっきから美香はドスドスと俺の心臓に言葉のナイフを突き立てる。


おかげで大ダメージだ。



「で、でも・・・2人・・・仲良さそう・・・」



焔が赤くなりながら呟く。



「・・・・・・。」


「・・・・・・。」



俺と美香は言葉を失う。


焔がそう感じていると言う事は・・・ 



「もしかしてクラスにバレてるんじゃ・・・」


「そ、そうよ!絶対にそうよ!」



俺と美香は慌てふためく。



「あ、クラスの皆にはバレてませんよ・・・」



「「えっ!?」」



同時に腑抜けた声を上げる。



「さっき、保健室で見てて感じたんです・・・」



「「・・・・・・。」」



((紛らわしい・・・!!)) 



これが2人の本音であった。



「あ!甓尖君に栗橋さんに焔さん!」



ん?おー。先生だ。



「どうしたんですか?」


「保健の金木先生から、幸田さんが保健室で試験を受けるって聞いたから、先

生驚いちゃって・・・」


「あぁ、そうですか」


「でも大丈夫ですよ。あの子、楽そうな顔してたし」


「熱もないし・・・」


「あら、そうなの?良かったわ」



先生はホッとため息をつく。



「それより、早く席に着いて。試験が始まっちゃうわ」


「うす」


「ハ〜イ」


「分かりました・・・」



それぞれが席に着くと、丁度、試験開始の鐘が鳴った。


一斉に用紙が配られ、早くもシャーペンのカリカリと言う音が聞こえ始めた。



最初の試験は国語総合(現代文+古典・漢文)。


『カリカリカリ・・・』


『リ〜ンゴロ〜ン!』



終了の鐘が鳴る。


まずは上々。



2時限目、数学。


『カリカリカリ・・・』


『リ〜ンゴロ〜ン!』



鐘が鳴る。



3時限目、英語。


『カリカリカリ・・・』


『リ〜ンゴロ〜ン!』



鐘が鳴る。



4時限目、社会(日本史)。


『カリカリカリ・・・』


『リ〜ンゴロ〜ン!』



鐘が鳴りって考査は終わり、昼食に入る。


ちなみに昼からはそれぞれフリーだ。



「カワラっち」


「ん?」


「一緒に食べない?」



美香が弁当を引っさげてやってきた。



「あ、あの・・・」


「お?」


「私も一緒によろしいでしょうか・・・?」



焔も弁当を手にしてやってきた。



「ああ、いいぞ」



ルミナの机と俺の机をくっ付けて、3人で昼食をとる。



「それにしても、4時間があっという間に終わった気がするわ・・・」



美香が片手で肩を揉みながら疲れた声で言う。



「ああ。内容を省略できた上に、全部コピー&ペーストらしく、作者は満足みた

いだ」


「何の話よ」


「報告だ」


「誰に?」


「読者に?」


「また!?」


「あの・・・何の話ですか・・・?」



焔が首を傾げる。



「あぁ、気にしないで」


「確かに。関われば関わるほど混乱するからな」


「は、はぁ・・・」



焔は訳の分からない顔をしている。



「所で・・・」


「何?」


「例の5人衆は何処に潜んでいる?」


「あぁ、あの子らね・・・」



美香が鼻で笑いながら言う。



「あの後、一晩中吊るされたままで、風邪ひいて寮で寝込んでるわ」


「5人とも?」


「そう」


「寮長が凄ぇ・・・」


「ホント。カワラっち、あの時帰って正解よ?」


「全くだ」


「何かあったんですか・・・?」



そういや、焔は知らないんだよな。



「それがね、聞いてよ脩子ちゃん」


「余計な事言うなよ」



釘をさしてやった。



「・・・・・・。」



美香が黙る。


これでもまだ言うようなら、コイツは悪魔かそれ以上かなので── 



「カワラっちったら、襲われそうになったのよ」



・・・・・・。



ハイ。3秒で撃沈。



俺が甘かったよ・・・ 



「汚されたんですか・・・?」



顔に似合わず、すんごい事言うね。キミ・・・ 



「むしろ、そっちの方が良かったのかしら?」



お前は喋るな。本当に。



とまぁ、こんな感じで、30分。



「さて、お昼も終わったし、あたしは部活に行くわ」



美香が立ち上がって背伸びをする。



「あ、じゃぁ、私も図書室のほうに行きますね・・・」



焔も鞄に弁当をしまいこむ。



「それじゃぁ・・・ルミナの様子でも見てくるとするか・・・」



俺も徐に立ち上がって、片手で肩を揉む。



「それじゃ、カワラっち。あたし達こっちだから、ルミナっちの事よろしくね」


「分かった」


「そ、それじゃ・・・」


「ああ、今日はすまなかったな焔。色々と世話になったよ」



焔は軽く会釈すると、美香と共に歩き出した。


俺も美香達の進行方向の反対側を歩き出した。


目的地は勿論、保健室である。



『コンコン』


「はい?」


「失礼します」


「あら、甓尖君。部活は?」


「今はまだ入ってませんので」


「そうなの」


「所で、ルミナの・・・ 幸田の様子はどうですか?」


「テストが終わって安心したのか、今ぐっすりと寝ているわ」


「そうですか」


「心配なのね?」



金木先生は悪戯っぽい顔で迫ってくる。



「そりゃぁ、まぁ・・・」



俺は曖昧な返事を返す。


本当なら、「ええ。そうです」と言いたい所だが・・・ 


時期尚早と言うべきか・・・

まだ早いと思う。



「まぁ、いいわ。それより、先生今から職員室に行かなきゃいけないんだけど、

ここにいてくれるかしら?」


「ええ、かまいませんよ」



俺は二つ返事で了解した。



「助かるわ。それじゃ、私が帰ってくるまでお留守番、よろしくね♪」


「はい」


『バタン』



全く・・・生徒に保健室任せる保健医がいるか?普通。


ふぅ・・・とため息をついてルミナが寝ているベッドの傍にある椅子に腰掛け

る。


ルミナはスヤスヤと寝息を立てて眠っていた。



「フフッ・・・」



俺はつい、可笑しくなった。


ルミナの顔を見ると、何故か気持ちが安らぐ。



カーテンを捲くり上げる風と、差し込んでくる初夏の日差しが、それをより一

層感慨深くさせる。




そうか・・・ 


俺が一目惚れをしたのか・・・ 



冷静に考えてみればそうなんだよな。


俺がルミナに惚れた。

ただそれだけの事・・・



窓から吹き抜ける風が俺を優しく包み込んだ。




──ちなみに、ルミナが目を覚ましたのは6時間後の午後7時だった。