5月下旬。
珍しく、一週間丸々祝日、祭日、振替休日に創立記念日が重なり、5連休と
なっていた。
「フアァ・・・」
テストも一段落つき、久々の休日を俺は欠伸をしながら家で過ごしていた。
親父とお袋は水入らずで出かけているし、百合華は大会が近いとか何とかで
合宿に行っているので当分帰ってこないし、ルミナはこの連休を利用して家族
で旅行中らしい。
さすがに5連休となれば、お手伝いさん達にも暇を出す。
何人かで1日交代という方法をとらしている。
なので、屋敷内に居るのは俺と数人のお手伝いさん達だけなのである。
葉は青々と生い茂り、初夏の日差しが鳥の泣き声と共に部屋の中に入ってく
る。
今日もいい天気だ・・・
─同時刻、甓尖家周辺。
ある1人の男が甓尖家へと近づいてくる。
「懐かしいなぁ・・・」
この男は一体!?
::第7話 - story1::
─甓尖家3階、耀獅フ部屋。
何もすることの無かった俺はとりあえず机に向かう事にした。
と、言っても何もする事がないのには変わりない。
とりあえず小説でも読むとするか。
足を組んで片肘で頬をつき、コーヒーを啜りながら小説を読んでいると、何や
ら気配がする。
しかも既に部屋の中にいるようだ。
確実に。
まぁ、誰だとは言わないけど一応言っといてやるか・・・
「出て来い」
背中を向けたまま俺は誰も居ないはずのないバルコニーに向かって俺はそう
言った。
「あら?バレてた?」
声の主はバルコニーから素っ頓狂な声でのそっと現れた。
その男は、先程まで甓尖家の周りをうろついていた人物であった。
「人のベランダから勝手に入って来る馬鹿は世界中でお前ぐらいしかいねぇよ」
軽く小馬鹿にするような声で言ってやった。
「1年ぶりに会う親友に向かって冷たいお言葉ですねぇ」
奴は皮肉った声で言ってきた。
「だったら玄関から入って来い」
「おいおい・・・ せめてこっち向いて喋れよ」
まったく・・・
俺は重い体を奴の方に向けると、そこには1年前とまったく変わらない蓮也の
姿があった。
こいつの名前は車岳蓮也(くるまだけ れんや)。
中学時代の親友だ。
・・・本当は親友かどうかすら疑わしい所である。
少しこいつとの出会いを語ってみよう。
蓮也との出会いは3年前に遡る。
今から3年前、私立雲山中学。
男子校ね・・・ 一応・・・
入学したての1年生だった俺はその頃から、その顔のキレイさと容姿で注目を
浴びていて、迷惑を被っていた。
たいして友達も作らずに基本的に一匹狼だった俺がある日、学食で昼食をとっ
ていた時に図々しく前の席に座ってきたのがこの男。
ニヤニヤしながら俺の顔を食い入る様にして見入り、口を開いた。
「お前、頭固そうだな。友達いねぇだろ?」
・・・これが奴と最低最悪の出会い。
「ここ座っていいですか?」
と、黙って謙虚に入ってきて会話が弾んで仲良くなるパターンならいざ知らず、
いきなり初対面の者に向かって、
「友達いねぇだろ」
であるから、当然、俺の怒りのボルテージはMAXになるのである。
「ぐわっ!!」
「やめっ!!」
「悪かった!!!」
等のコイツの助けを求める声を完全に無視して容赦なく気の済むまで5分ほど殴
り続けていた。
床でピクピクと痙攣する奴を放って置き、俺は顔色を変える事無く教室へと帰って
いった。
気を取り直して教室で小説を読んでいる俺に、またもや奴が近づいてきた。
「よ〜。さっきは悪かったよ〜〜」
「何の用だ」
見向きもせずに低い声で言う。
「怖いねぇ〜」
「貴様のせいだろ」
「イタイ所突いてくるね・・・」
奴は少し寂しそうな顔になった。
「自分の教室に帰れよ」
鬱陶しくなったので嫌悪感丸出しの声で言った。
「俺、ここのクラス」
「・・・・・・。」
俺は再び目線を落とし、本を読み始めた。
「おいおい!なんだよそのリアクション!あ、そうそう、自己紹介が遅れたな。
俺は車岳 蓮也(くるまだけ れんや)ってんだ。あんたの名は?」
・・・相手がいくら大バカでどんなに礼儀の知らない野郎でも、先に名前を言われたら
返さないと自分の信義に反する。
仕方が無い・・・
「甓尖 耀氏v
相変わらず見向きもしない。
「ふ〜ん。変な名前だな」
言い終わるのが早かったかどうかは知らないが、その1秒後には深くめり込んだ顔か
ら煙を上げて、大の字で仰向けに倒れている奴の姿があった事に間違いは無い。
勿論、間髪入れずに俺が殴ったわけなのだが。
『ブシュウ〜〜・・・』
と、顔から上がる煙の音がどれだけ威力があったかを物語っていた。
他の連中も、
「「う〜ん・・・」」
と同情の眼差しで倒れている蓮也を見ていた。
その後、1時間ほど奴は土下座していたが、俺は一言も喋らずに学校を後にした。
