「言ったよ。『人間じゃねぇ』ってどういう意味だよ」



どうやらそこが気に入らなかったらしい。



「ケン○ロウが人間だと思うか?」


「いいや」


「な?」


「うっ・・・」


「俺の勝ち」


「ぐ・・・」



蓮也は苦苦しい顔をした。




::第7話 - story5::




それにしても、何故『人間じゃない=サル』になるのであろうか・・・ 


コイツの等式・・・ 

いや、思考回路はどこかおかしい。



「し、しかし・・・なんで俺の食う物がザル蕎麦と分かった!?」



話題を変えてきやがったな。



「お前、店に入る前に商品のディスプレイ眺めてたろ」


「んなっ・・・!!」


「2連勝」


「ぎ・・・」



今度は歯ぎしりをしている。


いや〜・・・ 単純だからおもしろい。



「チェッ・・・」



拗ねた。


本当にガキだな。



「お待たせ致しました。ザル蕎麦定食と雑炊定食です」



ウェイトレスのお姉さんが品物を運んできたので、俺達は同時に手をつける。



「ところで蓮也」


「ん?」


「こっちに帰ってきたのはいいけど、どっか学校に編入するのか?」


「ああ、親父のヤローが勝手に決めちまいやがってな。来週からそこに行く事になった

んだよ」


「ふ〜ん・・・」



どっかで聞いた事があるようなないような・・・ 



「お前は?」


「俺か?」


「ああ」


「近くの高校に編入したんだよ」


「へー・・・ じゃぁ、お互い頑張らないとな」



蓮也が笑って言う。


お前・・・ 成長したな・・・ 

嬉しいぞ俺は。

本当。


あの頃の思い出といえば・・・ 

毎日のようにお前に振り回されて、家に居ればベランダから勝手に侵入して来て、他の

奴らと喋れば嫉妬か何かは知らないけど割り込んでくるし、俺に自由な時間なんてなか

ったもんなぁ・・・ 



・・・・・・。 


なんか無性に腹が立ってきたぞ?

気のせいか? 



「ごっそさ〜ん」



蓮也がすっ呆けた声を上げる。



「おそまつさん」



俺も悪ふざけで言い返す。



「それじゃ、動くか」


「ああ」



俺は立ち上がりながら後ろポケットに入れている財布に手をかけた。



「あ〜、いい。いい。俺が出す」


「え?」


「いや、だから。俺が払うって」


「いいよ、別に。奢ってやるよ」


「なんだ、本気だったのか?」


「ああ」


「単純だ─ ブッ!!」



也の鼻先に俺の左ストレートが入った。



「よくもまぁ・・・ 利き腕じゃない方でそんなに力だせるなぁ・・・」



痛そうに鼻を押さえる蓮也。



「当たり前だ。そんなんじゃ身を守れん」


「何処の宗教だよ・・・ ったく・・・」


「ブツブツ言ってんじゃねぇよ」


「はいはい。っつー訳で俺の奢りな」



蓮也は爪楊枝を一本取り出して口に加えながら言う。



「今のはなんの脈絡もなかったな」


「唐突だろ?」


「うるせぇ」



会話になっていない。



「ま、なんにせよ俺が急に押し掛けたんだからコレぐらいの事はさせろよな」


「分かったよ」



なんだかんだ言いながらも、こいつはこいつなりで成長している。



「さて・・・ どうする・・・?」

「どうしような・・・」



昼食が済んだものの、午後の予定が一切なく、俺達はモールのど真ん中で立往生してい

た。



「暇」


「うるせぇ」


「暇」


「うるせぇ」


「暇」


「殴るぞ」


「・・・・・・。」



黙った。



「どっかねぇの?」


「案内板見て来いよ」


「うぇ〜い」



両サイドのポケットに手を突っ込んだまま、蓮也は駆足で10mぐらい先の案内板まで走っ

ていった。



「ふぅ・・・」



ひとまず一服。


モール内のベンチに腰掛けて首だけ上を向く。



「ねぇねぇ、お兄さん」



あん?

顔を戻すと、17・8ぐらいの3人グループのお姉さん達が立っていた。



「何か?」


「1人でお買い物ですか?」


「いえ、もう1人連れが居ますけど?」


「女の子?」


「いいえ。野郎ですが?」


「どんな人ですか?」


「あー・・・ 精神的な大バカ野郎ですけども?」


「私達と一緒に遊びません?」



・・・・・・。


ん?コレはもしかして、俗に言う逆ナンとか言うヤツでしょうか?



おっと、その間に蓮也がタイミングの悪い時に帰ってきた。



「耀氏`。どこも行く所ねぇぞ・・・って、何してんの?」



蓮也と俺の顔を見比べるや否や、お姉さん達は中を向いて何か相談をし始めた。



「ランクは?」


「超Sランク!」


「だよねだよね!?」


「二人とも、むちゃくちゃ顔キレイじゃん」


「女として羨ましいぐらいだわ」


「ホントホント」


「どっち?」


「あたしメガネの人!」


「私は後から来た黒髪の人!」


「私もメガネの方」


「メガネの人のどこがいい?」


「知的そうな所!」


「あ〜、わかるわかる」


「黒髪の人は、バカっぽくていいかも」


「うんうん。」 



・・・・・・。


丸聞こえなんだけど・・・ 


とりあえず、危ない匂いしかしないので逃げるとするか。



「蓮也。行くぞ」


「お、おう」



未だに何かを企んでいるお姉さん達をほったらかして、俺達は店内を出た。



「ちぇっ・・・」



舌打ちの音がした。



「どうした?」


「バカっぽいってなんだよバカっぽいってよ」



珍しく落ち込み気味だ。



「イヤ、違うぞ」


「何が?」


「お前はバカっぽいんじゃなくて、バカなんだ」



一瞬上がりかけたその肩が更に深く落ち込んだ。



「気にするな」


「トドメをさしておいて言うか?普通」


「まあまあ。所で、何処行く?」



これ以上つけこまれるとこちらとしてもマズイ。



「あ〜・・・ そうだな〜・・・」



蓮也は話を変えた事を気にしていない。


と言うか、気付いていない。


でもまぁ、過ぎた事をしつこく言わないところがコイツのいい所なのかもな。



「あ、そうだ。俺んち来るか?一応見せときたいからさ」


「お前のアパート?」


「そう」


「ん〜・・・ そうだな。そうするか」



とりあえず行き先が決まったので、サイドカーに2人して乗り込む。


エンジンをかけて出発しようとした時、またもや社長がその大きな肢体を揺らしながら走ってき

た。



「か、甓尖様!もう、お帰りですか!?」



息切れしている。



「えぇ、久々に来るのもいいですね。また来ますよ」


「そう仰らずに、甓尖様にはまだまだ見て頂きたい物がございますのに」


「社長」


「はっ」


「しつこいのは好みませんが?」


「・・・っ!!?」



社長の顔が一気に青ざめた。



「センターの景気も良いみたいだし、これなら安心して任せられますよ。では失礼」



そう言い残して、俺はサイドカーを走らせた。


後には、中年の太った男性が、ただただ立ち尽くすだけであった。



「で、お前のアパートって何処だ?」


「え〜っとな。北に埼玉県があって、どちらかというと千葉県よりの方向だ」


「・・・降ろすぞ」


「だー!悪かったって!お前の場合、洒落になんねぇもん!」


「ウソに決まってんだろ」


「冗談になんねぇからさぁ・・・ マジで・・・」


「分かったからさっさと言えって」


「とりあえず、1回お前の家の方まで行ってくれるか?そっちの方が案内しやすいだろ」


「了解」


俺はアクセルを全開にして家へと向う。