『ガヤガヤ ワイワイ』



長い大型連休が明け、学園は再び活気付く。


6月。

暦の上では、今月から、『夏』である。




::第8話 - story1::




─玄関。



「よっ!カワラっち!」



朝から厄介な相手に出会ってしまった。



「おはよ」


「なんだ、元気ないじゃん。さては休み中、ルミナっちに会えなかった事が響いて

いるのかにゃ〜?」


「言ってろ」


「図星かしら?」


「大ハズレだ」


「嘘っ!?」


「なんでそんなに驚く事がある」


「イヤ、だってカワラっちは絶対にルミナっちにゾッコンだと・・・」


「・・・・・・。」



返す言葉もない。



「冗談よジョーダン」


「つかなんでそんなに朝からハイ(テンション)なんだよ」


「いつも、こんなのよ?」


「知らねえよ」



話に関連性が一切ないのもこの二人の会話の特徴である。



「それよりも、知ってる?」


「何が」


「また編入生が来るんだって」


「ほー」


「興味なさそうね」



美香が、少しつまらなさそうな顔をした。



「まぁな」


「でも、コレ聞いたら興味持つわよ」


「なんだよ」



美香はクックと笑いながら、厭らしい目をしている。



「その編入生、男子なのよ!」


「ふーん」


「・・・・・・。」



全く関心のない俺の返事にさすがの美香も軽く項垂れた。



どうやら、このネタで話を伸ばしたかったらしい。



「んで?その情報はどっから漏れたんだ?」



すると、美香の顔がパッと明るくなった。



「そうなのよ!それなのよ!カワラっちったら、いけず(※いけず【大阪弁】いじわ

る)ね〜。早く言ってくれないとこっちが困るわよ」



急に喋りに活気付く美香。


お前の極端な変化にこっちが困るわ。



「実は朝練が終わって、理事長室の前を通ったら、中で理事長と教頭の話し声が

聞こえたのよ」


「それで?」


「確か、

『・・・まだけ れ・・や君はまだ来ていないの?』

『はい、自宅の方には何度も連絡を入れているのですが・・・』

『困ったわね。編入初日で・・・』

ってのは聞き取れたんだけど・・・」


「地獄耳か?」


「うーさいわね」



いや、相当の耳の持ち主だ。



「『君』って言っているから男の子には間違いないんだけど」


「まだけ・・・れいや?」


「あ、そうかもしんない」


「珍しい苗字だな」


「『甓尖』も相当なものよ?」


「うるせえ!」



ちくしょう、名前を否定しやがった。



「と・に・か・く!良かったわね、カワラっち。お友達ができそうよ」


「出来る出来ないの前に、その話が本当ならな」



俺は鼻で笑いながら言う。



「どういう事よ」



美香がムッとした様子で言い返す。



「その編入生君とやらが、話を先に延ばすかも知れないだろ」


「そんなこと無いでしょ」


「分かるかよ。可能性なんていくらでもあるんだからよ」


「むー・・・」



顎に手を置いて悩む美香。


結構、くだらない事に没頭するんだな。


いつしか、教室の前まで来ており、止まることなくそのまま二人して入っていく。



「美香、オハヨー」


「おはようさーん」


「甓尖君も一緒だ!オハヨー!」


「おのれっ!現れたな!」



俺は即座に戦闘態勢に入る。


なぜなら、今話しかけてきたのが、先日俺に睡眠薬を飲ませて喰おうとした(第6話

#5)悪レッドだったからだ。



「あっ!もう何もしないよぅ。この間は本当に悪かったから!」


「分かるか。場所もわきまえないだろ」


「大丈夫!ホンットに大丈夫だから。アレだったら身体検査してもいいよ」



そこまでするか!



「ハイハイ。2人とも朝のコミュニケーションは済んだかしら?」


「どこがだ!」



即座につっ込む。



「わかったわかった。あら?ルミナっちが来てないわね」



美香がキョロキョロと教室内を見回す。



「あぁ、恵ちゃんなら、さっき職員室行くって言ってたよ」



恵ちゃんとはルミナのニックネームである。



「珍しいわね。あの子が職員室に用だなんて」


「なんだ?そんなに職員室と無縁か?」


「当たり前よ。成績いいし、先生からの信頼も厚いのよ?」



そう言うと、美香は俺の前の席にどっかと腰を下ろす。



「生徒が職員室に行くのが不自然か?例えば書類出しに行くとかあるだろ」


「そう言われればそうね・・・ ま、ルミナっちの事だから大丈夫ね」



最後の辺りが、なんかなげやりな感じに聞こえたのは俺だけか?


そんな事を言っていると、ルミナが帰ってきた。



「あ、美香ちゃん。ヨウライ君。おはよ☆」


「おはようさん」



と、美香。



「おはよ」



と、俺。



「あんたが職員室行くなんて珍しいわね」


「うん、ちょっと先生に頼まれ事があって・・・」



ルミナの声が濁る。


「どんな頼み事?」


「あ!ダメダメ!話しちゃいけないって言われてるの」



「何ソレ?極秘事項を頼まれた訳?」


「う、うん・・・」


「まぁ、そんなに喧々するな美香」


「でも気にならない?カワラっち」


「大方、今日来る編入生の事だろ」


「えっ!?」


「えっ?」



ふたりして驚きの眼差しで俺を見る。



「なんでヨウライ君、知ってるの!?」



ルミナはその事を知る筈も無い俺が知っていた事に戸惑いを隠せないようだ。



「あ、そうなの。やっぱり本当だったんだ」


「えっ!?美香ちゃんも知ってるの!?」


「まぁ、一応ね・・・」


「んで?学校案内でもさせられるのか?」


「う、うん・・・」


「カワラっち、あんた霊感者?」



なんでだ。



「あのな。霊感が強くてどうする。今のとは全く関係ないぞ」


「いや、さっきからルミナっちの心の中をズバズバと当てていくからね」


「でも、なんで分かったの?」



ルミナが不思議そうな顔をして覗き込んでくる。


だからやめろってのに。


理性が利かんと前にも言って・・・ 

ないか・・・ 



「いや、な。さっきの美香の話と組み合わせたら簡単だなと」


「どういう事よ」


「ルミナ、その編入生って男か?」


「うん」


「いいか、2ヶ月前に、俺がここに編入してきた時もそうだったが、最初に声をかけ

てきたのはルミナだろ?」


「初日に色々と喋ってたじゃない」


「あれは、拉致って言うんだ!(第1話・#2)」


「でも、そういえばそうかもね」


「それで、先生が『ルミナなら男子とも喋る事ができるのだからルミナに任せよう』と

か何とか言ってその編入生をルミナに任せるつもりなんだろ。多分」


「なるほどねぇ。それならつじつまが合うわね」



美香がうんうんと相槌を打つ。



「でも、あたしヤダな・・・」



ルミナがシュンと落ち込む。



「ルミナっちは初対面の人には無愛想だもんね」


「違うよ。人見知りが激しいのは美香ちゃんが一番知ってるでしょ?」


「確かにね」


「俺の時は積極的に話し掛けてきたのにか?」


「ヨウライ君!」



ルミナの顔がみるみる内に真っ赤になっていった。



「鈍感ね〜。カワラっち」


「あん?」



美香が呆れ果てた目で俺を見る。



「なんでもないわよ。ところでルミナっち、その人の名前とか聞いた?」



おおぃっ!無視か!