蓮也の死骸(?)に群がる女子生徒を尻目に、俺達は掲示板を目指す。



「あらら・・・良かったの?あれで」



美香がさすがに心配そうな声を上げる。



「俺が二ヶ月前に来たときと同じ事を、あいつにも教えてやろうと思ってな」


「それ単なる巻き添え」


「違う。再発」


「病原体みたいに言わないでよ」



しかし、コレで蓮也もこの学校の恐ろしさが分かっただろう。


ナンマンダブ、ナンマンダブ。




::第8話 - story5::




『ザワザワ』



テストの結果が張り出されたA棟1階、生徒玄関前の休憩所の前には人だかりが

出来ていた。



「凄い人だね・・・」


「ルミナ、見えるか?」


「ううん、ダメ。やっぱり身長低いからかなぁ・・・」



シュン・・・と落ち込むルミナ。


そのいじらしさが、またなんとも母性本能をくすぐったりもするので・・・ 


って、変態か俺は。



「前行こうか?」


「後でいいよ。せっかくあたし達より先に来てるんだから」



優しいねぇ。



入れ替わり立ち代わりで、見る人が替わっていく。


が、見終わった人が俺たちの顔をジロジロと見て、ヒソヒソと話しながら去っていく

のは何故だろう。


正直、居心地悪い。



「なんで、みんなあたし達を見てくんだろうね?」



ルミナも不思議に思っているみたいだ。



「なんでだろうな」



俺も適当な相槌をうつ。



「ホーラー。前空いたわよ、二人とも」



どうやら俺達の順に回って来たらしい。


どれどれ・・・ 



1位─ 焔 脩子 (C組) 395点  


2位─ 甓尖 耀氏@(C組) 392点 


同立2位─ 幸田・ルミナ・恵子 (C組) 392点 


4位─ 道田 麻恵 (E組) 386点 


5位─ ・・・・・


6位─ ・・・・・・



んー・・・ 

妥当か・・・ 



「げっ!?あんた達、バカじゃないの!?」



美香が眉間に皺を寄せて怒鳴る。


イヤ、別に怒鳴る必要など何処にもないのだが。


おそらく、上位三人がこの場にいる事が美香にとっては嫌らしい。



「そう怒るな。お前の順位も探してやろう」



親切そうに見える意地悪だ。



「結構よ。第一、50位以内に入れるような頭は持ってないわよ」 



62位─ 栗橋美香 (C組) 24・・ 



「コラッ!勝手に読むんじゃないわよ!」



美香が天井に向かって吼え出した。



「誰に話してんだよ」


「え?・・・・読者?」



美香が戸惑いながら言う。



「な?たまにそうなるだろ」


「こうゆう気持ちになるのね・・・ 結構キツイわ」



仲間(?)が増えた所で、とりあえず同盟結成の握手をしてから俺達はこの場を後

にする。



「それにしても賢いな。二人とも」



まったく。



「そうだね。特に焔さんにはビックリしたね」



いやいや、貴女の事を言ってるのよ?



「なーに言ってんのよ。あんた、保健室で寝ながら受けたんでしょ?今回は落ちて

くれると思ったらカワラっちと一緒に同立の2位だなんて」



お前、そんな事考えてたのか。



「ヨウライ君が古典・漢文を教えてくれたから、国語は点が取れたんだ♪」


「それわ良う御座いましたわね」



ルミナの笑顔と対するかの様に、美香の声と顔が嫌味ったらしい物になった。



「焔は?」


「いつも通りです・・・」



落ち着いたか細い声が返ってきた。


秀才か・・・。



・・・・・・。


そうか、だからさっきジロジロ見られたんだな。


上位3人組が勢揃いしていたから。


とりあえず、元来た道を引き返して教室に戻る。



その途中、廊下の真ん中でボッロボロになった制服に一応身を包み、ただの抜け

殻と化した体をちぢこめる様にして横倒れになっている蓮也に遭遇した。


ついでに、口から何か白い物体が出ている。


俺は蓮也の足首を掴むと、そのままズルズルと引きずる様にして歩く。



「何だか可哀想だね」



ルミナが同情の目で蓮也に目をやる。



「コレでこいつもこの学院の恐ろしさが分かっただろ」


「あくまでもポジティブ思考に持っていこうとするあんたの考えに拍手を送るわ」


「いらん。逆に腹が立つからヤメろ」



久しぶりに俺と美香とのローテンションの口喧嘩が勃発する。



「もうっ。やめようよ、二人とも」



ルミナが仲裁に入る。



「それよりも知ってる?」


「何が」


「生徒会の夜叉小路が何か不穏な動きを見せてるんですって」


「どっから入って来るんだ?その情報」



プライバシーもへったくれもないな。おい。



「新聞部よ。密かに校内新聞を発行してるのよ。裏で」


「それ、相当怖いな」



完全なパパラッチじゃん。


階段に差しかかり、2階へと上がっていく。



『ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!』



後ろから、鈍い音が響く。



・・・・・・。


あ、忘れてた。


蓮也引きずったまんまだ。



・・・・・・。


まぁいいや。


今更引きずり方変えるのも面倒だし。



『ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!』



階段は、踊り場を合わせて24段ぐらいあったが気にせず、結局教室まで蓮也を

引きずって行った。



『ドサッ!』



大量のたんこぶを頭につけた蓮也を椅子に放り投げて俺も自分の席に着く。


昼休みは、まだ10分ぐらい余裕を残している。



『ガラガラッ!』



滅多に誰も来る事の無い多目的室もとい、仮1−Cの後ろ側のスライドドアが勢い

良く開いた。



「甓尖耀氏I出て来なさい!」



声の主は、その金色の髪をくるっくるに巻いている、あからさまなお嬢様だった。



「「「「「・・・・・・・・・。」」」」」



シーンとクラスが静まり返る。



「む・・・?なんですの?私の顔に何か付いて?」



クラス全員が一斉に首を横に振った。


と、言うより、あなた自体が不思議で仕方ありません。



「何をボサっとしているの!早く甓尖耀獅出しなさい!」



金髪のカール譲さん事、夜叉小路さんの取り巻きの1人が、声を張り上げて怒鳴

る。



「はい。甓尖耀獅ヘ俺ですけど・・・」



これ以上、大声出されると困るのでさっさと自首する事にした。



「何かご用ですか?」



俺は夜叉小路さんの前まで行き、顔を覗き込む。



「───ッッ!!」



夜叉小路さんは手の甲を額に当てて卒倒しそうになった所を取り巻きが支える。



「あああ・・・あなた!夜叉小路さんを覗き込まないで!早く離れなさい!」


「さっき、来いって言ったじゃないですか」


「いいから!早く!」



なんなんだ?


俺は1m程、距離を置く。



「ああ・・・ 今のは私には少し刺激が強すぎますわ・・・」



アイスノンと書かれた冷却剤のベルト状な物を頭に巻きつけた夜叉小路さんが、

訳の分からないセリフとともに起き上がった。



「甓尖耀氏I・・・・・・。あ、あの・・・」



急に、俺に指を指したかと思うと、今度は指だけ残して顔を下に向ける。



「麻美様!ファイト!」


「麻美様。もう少しですわ」



取り巻きは意味の分からない声援を、小声で夜叉小路さんに送る。


聞こえてるんだけどね。



夜叉小路さんは一度、大きな深呼吸をして再び俺を直視する。



「・・・・・・!!」



何か言いたげだが、その口は強く閉ざされている。



「・・・・・・!!!!!!」



次第に顔が真っ赤になっていく。


息、してないし・・・



あー、もう。

面倒だな。



「夜叉小路先輩?」



と、俺が名前を呼んだ直後─ 




『ボンッッッッ!!!!』




夜叉小路さんは、音を立てて再び卒倒した。



「キャー!!?麻美様!麻美様!?」


「大変!早く保健室へ!」


「あなた!覚えていなさいな!」



取り巻き三人衆は、夜叉小路さんを抱えて走っていった。



「「「「「・・・・・・・・・。」」」」」



シーンとクラスが静まり返る。



『リ〜ンゴロ〜ン!リ〜ンゴロ〜ン!』



そんでもって予鈴が鳴る。



せめて、クラスのこの空気をどうにかしてから帰れと、心から思う1−Cクラス

一同だった。