一方教室(仮)。



「どうする?俺達も見に行くか?」



耀獅ェ教室を出た直後、蓮也が言い出した。



「私は行くよ」



と、ルミナ。


彼女の場合はほとんど好奇心からであろう。



「私も気になるから行く」



と、ヨネ。



「だからコメだって!!」



失礼・・・



「米ちゃん、誰に言ってるの?」



突如誰も居ない方向に叫んだ米谷にルミナがツッコむ。



「え!?・・・あれ?」



どうやら無意識に言っているようで、記憶にはあまりないらしい。



「しゃーないわね。あんた達だけじゃ何するから分かんないからあたしも行くわよ」


「「「・・・・・・。」」」



蓮也・ルミナ・米谷の3人は急に黙り込んだ。



(((自分が一番行きたそうな顔をしてるのに・・・)))



と、同じ感想を持って。




::第9話 - story2::




「何?」



美香は3人の視線が自分に一点集中しているのに気付く。


後がうるさそうなので、3人は同時に首を振る。



「とりあえず行くならサッサと行こうぜ。終わっちまうよ」



痺れを切らした蓮也がグダる。



「わぁーったわよ。行くよ?ルミナっち」


「あ、ウン。脩子ちゃんは、どうする?一緒に行く?」



脩子は小さく頷いた。



「じゃぁ、行こっか」



蓮也を先頭に、美香・ルミナ・脩子・米谷の野次馬連合軍が教室(仮)を出発にし

た。




─玄関。



「だから、危ないって!!」



未だに罵声の入り混じった声で、赤井は俺を止めようとする。



「心配いらないってさっきからずっと言ってるだろ?」


「そんなの分かんないじゃない!」


「じゃぁ、なんだ。俺にどうしろと言うんだ」


「兎に角、教室(仮)に戻ってジッとしてて!」



無茶苦茶な事言いやがる。



「赤井、俺が出て行かないとその不良どもは永久に校門に座り続けたままになる

んじゃないのか?」


「じゃぁ、蹴散らしちゃえばいいのよ」



・・・・・・。


コイツ・・・ 



「お前、さっきから言ってる事メチャクチャになってんぞ?」


「甓尖君の身の心配をしてあげてるんじゃない」



それはそれは・・・ 


ご苦労なこった。



「兎に角ジッと見てろ」


「・・・そんなに自信があるの?」



ようやく気付いた赤井。



「やられない自信はあるな」


「じゃぁ、ジッと見てる」



あっさりと引いてしまった。


今までのは一体何だったんだ?



「あ、いたいた。ようらーい!」


「うん?」



向こうの方から、蓮也を筆頭にルミナ達がゾロゾロと歩いてくる。


大方、野次馬だろう。



「何?まだこんな所にいたの?」



早々、美香に文句を言われる。



「そのセリフは俺をココに止めていた赤井に言え」


「薫も寄り道好きね〜」



美香は、呆れた目で赤井を見る。



「そんなんじゃないわよ!甓尖君が殺されちゃうかもしれないのに」



大袈裟だよ。



「寄り道って言えば、美香ちゃん」


「何?」


「さっき、途中で寄り道したよね?何してたの?」


「あー、あれね。カワラっちに頼まれた依頼を・・・ね」


「依頼?ヨウライ君、何か言った?」


「はて?」



何か言ったっけ?



「やーねー。さっき、碧を処刑しとけって言ったじゃない」



碧・・・?


ああ、悪グリーンの事か。



「何?本当に処刑したのか?」



まさか、本気にするとは思わなかったし。



「いや、処刑って言っても・・・ 合ってるって言えば合ってるし、違うって言えば違

うし・・・」


「あん?」




─数分前。



「もう、話が解決してるんじゃねぇ?」



蓮也がブツクサと文句を言いながら歩く。



「無理でしょ?そんな簡単に話がつくとは思わないけど・・・」


「いや、あいつの話のつけ方の早さは尋常じゃねぇから」


「ふーん」



実はこの会話、両者の話の捕らえ方は違っている。


美香の方は、


(そんなに弁舌なのかしら・・・)


だが、蓮也の方は、


(一撃でカタが付くと思うんだけどな・・・)


である。


その時、美香は向かいの廊下に見覚えのある1人の人間を見つけた。


通称:悪グリーン。

羽川 碧(はねかわ みどり)である。


そして、美香の脳裏にある言葉が浮かんだ。



『後で死刑執行してて』



耀獅ェ言った言葉である。


美香は意地悪そうにニヤリと笑うと、自分だけ列からはずれて一直線に羽川の後

を追った。



「あれっ!?美香ー!何処行くのー?」



米谷が叫ぶ。



「ちょっと用事あるから先に行っててー!!すぐ戻るからー!!」



振り返りながらそう言い返す美香。



「どうしたの?米ちゃん」



ルミナが立ち止まり、行軍が一旦停止する。



「いや、美香がね。用事あるから先に行っててって・・・」


「用事ぃ?」



蓮也が不機嫌そうな顔をする。



「どうしよう・・・」


「待っててあげようよ」


「ちぇっ」



ルミナに逆らえず、拗ねる蓮也。


その様子を見て、脩子が微かにクスッと笑った。


大方、



『やっぱり子供(ガキ)だな』



とでも思っているのであろう。



一方、美香。


物凄い勢いで廊下を駆け抜けていく。


そして、彼女は追いかけている人物を補足した。



『めっけ!!』



その顔はもう、悪魔に近い。


トップスピードの状態で羽川の後ろまでつき、そのまま目を隠すように押さえ、羽

川を脇に抱えるようにさらった。



「キャー!キャー!だ、誰よーー!!?」



羽川の必死の叫び声もその速さ故、周りには聞こえていない。


美香は女子トイレの前に来ると、急ブレーキをした。



『キキキキキキィィッ!!!』



室中用シューズなのに、異常なまでのブレーキ音を鳴らす。


そのまま豪快に2つある内の左側の女子トイレの扉を開けて中に入ると、一番奥

の個室に羽川を放り込み、どこからか取り出した板を釘で打ち、コレを取り外すの

には業者の力が必要なぐらいなまでに散々打ち付ける。


そしてトイレの扉を閉め、前に『使用禁止』の看板を立てかけて再び猛ダッシュで連

合軍の元まで走って帰って行った。


その所要時間、僅か1分45秒。


板の打ち付けに関しては30秒で仕上げている。


職人さんも真っ青な驚異的なスピードである。


その速さの為、廊下を歩いていた者も何が通ったか分からなかったらしい。



「誰かーー!!助けてーーー!!!」



一番奥の個室でドンドンと扉を叩く羽川。


その努力空しくその音は全く廊下には届いていなかった。



「誰の仕業よーー!!!」



羽川もまさかあの栗橋美香だとは思わないだろう。


結局、羽川が発見・救出されたのは、その日の午後2時だった。



「お待た!」



勢い良く美香がルミナ達の元に帰って来た。


しかし、その顔は行く前とは格別に嬉しそうな顔をしていた。


いや、嬉しそうと言うよりかは、楽しそうである。



「じゃあ、行こうか」



連合軍は再び歩き出したのであった。



「─とまぁ、そうゆう事」



「「「・・・・・・。」」」



この時、全員が思った。



(((コイツ、悪魔だ)))



「ん?耀氏Aもしかしてあいつらじゃねぇ?」



蓮也が何かを見つけ、目を細めている。


玄関から微かに見える校門に、数人の先生と何故か雨なのに傘もささず、座り込んで

いる二人の人影。



「え?どれどれ?」



全員が玄関から見えるポジションに集まって、縦一文字に並んでいる。


正面から見るとトーテムポールのようである。



「あ〜、誰かいるね」



と、ルミナがこぼす。



「傘もささずにバカみたい」



と、貶す美香。



「先生が何人かいるよね」



と、ヨネ。



「コメ!!!」



・・・米谷が叫ぶ。



「うわっ!ビックリした!」


「急に叫ぶなよ!」


「心臓に悪いじゃない!」



集中砲火を浴びる米谷。



「ご、ごめん・・・」



米谷はシュンと小さくなる。



「とりあえず、行くぞ」



俺は傘を広げて校門へ向かう。



「あっ、待って待って!」



ゾロゾロと後に続いてくる野次馬連合。



「・・・い加減に帰りなさい!ここは、神聖な学院なのです!」



あの声は・・・ 教頭か?



「ならば、早く甓尖耀獅出して貰おう!」



この声は・・・ 誰だ?



「そのような事が出来るわけがないでしょう!!」


「甓尖耀獅出すまで一歩も動かん!」



何やら、話が大きくなっている気が・・・



「教頭先生」


「甓尖君!?なぜ、出て来たのですか!」



いきなり怒られた。



「いえ、俺が出ない事には収拾が付かない様な気がしましてね・・・」


「ですが、危険です」



メガネの奥に不安げな表情が見受け取れた。



「大丈夫です。任せて下さい」



俺はそう言って教頭をすり抜け、二人組みの前に出た。



・・・・・・。


あれ?コイツ等は・・・ 



不良a・b!!?


何してんだ!?

こんな所で・・・



「あ!」



後ろで見ていたルミナが叫ぶ。


どうやらルミナも覚えていたようだ。



「何?知ってるの?」



意外そうに美香がルミナに尋ねる。



「う・・・ウン・・・」



そうだよな。


印象悪かったモンな。



「さて、わざわざ俺に何の用だ」



俺は、率直に尋ねた。


すると─



「俺たちを弟子にして欲しい!」



─と、言われた。



「「「・・・・・・。」」」



誰の口からも言葉が出てこない。



「頼む!この通りだ!」



しとしととは言え、雨の中で不良a・bは地面に頭をつけて俺にそう言った。


さて・・・ 困ったぞ?