─学院より400m程離れた場所にある喫茶店『COLORA(コロラ)』。


とんでもなく話がこじれそうだったので、先生に許可を貰って場所を移している。

勿論、この不良たちを銭湯に連れて行った後でだが。



「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」



長い沈黙が続く。



「さて、お話でも伺いましょうか?」



コーヒーを啜りながら俺は不良aに尋ねた。



「最初に言ったが、あんたの弟子にして欲しい」



話が一向に見えてこない。




::第9話 - story3::




「どあほう、その理由を訊いてるんだよ。第一、まだ名前も聞いてないぞ?」



俺は頬づえをついて対峙する。



「それはすまない。俺の名は魅堂 零次(みどう れいじ)。コイツは若峰 和貴(わ

かみね かずたか)だ。この間、あんたが俺達を助けてくれた(第6話・#2)のは覚

えているかい?」



懐かしいな。



「ああ、覚えている」


「その時の礼が言いたくてやって来た」



律儀だ。

偉いぞ、不良a。



「それは構わない。だが、それと弟子になりたいと言うのはどう関係があるんだ」


「あの時、あんたの戦い方を見ていた。あの剛柔の使い手はそうはいない」



ほー、判るのかコイツ。



「剛をもって外よりの強力な突きに、柔と為す内からの(受け)流し。俺が今まで探

していた戦い方の正に『型』そのものだ」


「それで・・・?」


「是非、俺達をあんたの弟子にして貰い、その剛柔術の教えを乞いたい!」



魅堂と名乗る不良aは、その鋭い眼光で俺を睨むかのようにして見る。




─同時刻、野次馬連合軍。



「か〜!!あいつらどこに行ったんだ!!」



例の如く、耀獅探しに行くとか言って、授業ほっぽり出して街に繰り出して来てい

るのである。


急に7人+トイレに閉じ込められている奴(鞄は教室)が教室から消えればそれこそ

大騒動である。


しかし、そんな事に微動だにしないのが1−C。

ノー天気組と言われるだけの事はある。


話を戻そう。


依然、街を練り歩く連合軍。



「そんな簡単に見つかる訳無いじゃない」



美香が両手を頭の後ろに回してダルそうに歩く。



「ほーんと、むしろ見つかった方が奇跡よねー」



赤井もヤル気の無さそうに言う。



「もうっ!二人とも、ヤル気がないのなら学校に戻って!」



いつもにこやかなルミナに一喝され、静まり返る二人。


滅多に怒る事が無いので効果は倍増である。



「じょ、冗談よ、ルミナっち・・・ ねえ、薫!?」


「そ、そうそう!私達もちゃんと探してるからね・・・アハハハ」



二人の乾いた笑い声が空しい。



「ねぇねぇ、恵ちゃん」



米谷がルミナに声をかける。



「なぁに?」


「ひとつに固まって動くより手分けした方が良くないかな?」


「そうだね、そうしよっか。丁度6人いるから、2人ペアで捜そ」



と、言うわけで、

ルミナ・脩子ペア

蓮也・美香ペア

米谷・赤井ペア

の、三組で捜索する事になった。



「で?何で、あたしがあんたと組まなきゃいけないのよ!?」


「そりゃぁこっちのセリフだ!」



早速、仲違いを始める美香と蓮也。



「仕方ないでしょ?一番しっくりきてるんだから」



ペアを決めたルミナが叱咤する。



「むっ・・・」


「くっ・・・」



どうあってもルミナには逆らえない2人。



「それじゃぁ、見つけたら携帯に連絡ね」


「リョーカイ!」


「はいはい」



連合軍は一斉に散らばる。



《3次元中継》


〜ルミナ・脩子組〜

「ねぇ、脩子ちゃん。ヨウライ君達、どこに行くと思う?」


「話をするんだったら、静かな場所でしょうか・・・」


「喫茶店とかかな?」


「その系統ですね・・・」


「よし!じゃぁ、喫茶店を中心に見て回ろっか」



流石は才女2人組みである。



〜米谷・赤井組〜

「さ〜て、どこから見て回ろうかしら?」


「学院の近くじゃない?」


「どんな所にいるのかしらね」


「あんなややこしそうな話じゃうるさい場所じゃ出来ないわね」


「と言う事は、静かそうな場所?」


「この辺りで静かそうな場所って、図書館とか?」


「あのね、あんな話をそんな場所で出来ると思う?」



米谷が呆れて様子で言う。



「分かんないから手当たり次第探して行こうか」


「それがいいかもね」



いい線はいっているが、やはり下位打線。

少し爪が甘いようだ。



〜蓮也・美香組〜

『ブッスー!!』

『ムスー!!』


依然不機嫌丸出しで並んで歩く二人。


その異常なオーラに近づける人はまずいない。



「探さなくても耀獅フ携帯に電話かけりゃあ済むだろ」



蓮也は携帯を取り出して耀獅フ番号に電話をかける。


『♪♪♪♪♪♪♪♪』


「あれ?電話だ」



蓮也からの着信に気付いたのは耀獅ナはなく、ルミナだった。



「幸田さんが、甓尖君の携帯を・・・?」


「ウン、『預かっててくれ』って頼まれたから。あ、車君だ」



ルミナは蓮也からの電話に出る。



「モシモシ?」


『うぇっ?け、恵子ちゃん!?』


「ウン、そうだよ」


『なんで耀獅フ携帯を?』


「ヨウライ君から頼まれたの。『預かっててくれ』って」


『うわっ!あいつ、余計な事しやがって・・・』



電話の奥で嫌そうな声が聞こえる。



「余計な事なんかじゃないでしょ!」



ルミナが怒鳴る。


どうやら、耀獅フ事を言われると自分以上に頭にくるらしい。



『うわった!ゴメンゴメン!兎に角、耀獅フ携帯を恵子ちゃんが持ってるって分かっ

たから。うん』



意味の分からない事を口にする蓮也。



「そう?じゃぁ、見つかったら連絡してね」


『了解・・・』


「それじゃ」


『ピッ』



─蓮也・美香組



「あ〜ビックリした〜」


「何?ルミナっちが出たの?」


「ああ、耀獅ェ恵子ちゃんに預けたんだと」


「ふーん。って言うかその携帯、もうバッテリー切れじゃない?」


「何っ!?」



『ピーーーー』



バッテリー切れを知らせる音が虚しく響いた。



「クソッ!お前、携帯は?」


「カバンの中」



悪びれる様子も無く、美香は言いのける。



「ちっ・・・」



蓮也は小さく舌打をした。



「ん?」



蓮也が視界に捉えたのは、耀獅轤オき人が建物の間をスッと横切ったモノだった。



「耀氏I!」



蓮也は大声でそう叫ぶと急に走り出してその影を追う。



「ちょ、ちょっ!!何処行くのよ〜!!?」



美香も突然すぎたので確認する余裕も無く蓮也の後を追う。



─ルミナ・脩子組



ルミナは『切』ボタンを押して携帯をしまう。



「幸田さん・・・」



と、脩子がルミナの腕をクイクイと引っ張る。



「何?脩子ちゃん」



「もしかして、アレじゃないですか・・・?」



脩子がスッと指を指した方向には、喫茶店『COLORA』の窓側の席で何やら神妙な

面持の耀獅ニ例の不良組みと見受けられる人がいた。



「あ、ほんとだ。ヨウライ君だ」



15m程離れていたが、ルミナの目はバッチリと耀獅フ姿のみを捉えた。


そして、スタコラとCOLORAに近づく。



「じゃぁ、幸田さん・・・ 私は皆に連絡してそのまま戻りますので・・・」


「え?あ、そっか。鞄、学校に置いたままだね」



『スッ・・・』



脩子が差し出したのはルミナと耀獅フ鞄であった。



「あれ?なんで脩子ちゃん持ってるの?」



ルミナは不思議そうでならない。

無理もないだろうが。



「カンです・・・ こんな事になるんじゃないかなと思って・・・」



明らかに違うであろうが、ルミナはこれ以上追求する気を無くしたのか何も言わなか

った。



「では、後の事は任せて下さい」


「ウン、ゴメンね脩子ちゃん。助かったよ」



『ペコッ』



脩子は一礼して学院へと戻っていった。


ルミナはその後姿を見送って、耀獅フ話に耳を傾けた。



─耀氏E魅堂・若峰



「断る・・・」


「なっ!!?」



魅堂と若峰が大きく仰け反る。



「何故だっ!!俺達は心からあんたに心服している!!」


「たとえそうであろうと、俺が教える物を喧嘩や殴り合いなどに使われるのはまっぴら

ごめんでな。同門や師に恥をさらす訳にはいかない」


「・・・確かに、今までの俺達の行動は荒れていたし、人様に迷惑もかけた・・・ だがな!」



魅堂は大きく乗り出して机を叩く。


その音に、店内中が静まり返った。



「これからは違う!あんたと言う目標を見付けたからには少しでもあんたに近づけるよ

うに信念を貫いてやる!」


「・・・おまえの信念ってのは?」


「あんたの教えを乞う間、あんたの言う事に従おうじゃねえか」


「フ、フフフフ・・・・」


「何が可笑しい」



魅堂がムッとした表情で言い返す。



「いや、近頃まれに見る珍しい逸材だと思ってな」


「珍しいだと?」


「魅堂とか言ったな」


「ああ」


「いいだろう、お前の信念とやらを見届けさせて貰おうか」


「何!?それじゃぁ・・・」



俺は伝票を手にしてレジに向かう。



「明日の午後6時、再び学院の校門まで来い。護身空手のイロハから叩き込んでやる」


「──ッッッ!!」



背中越しで声にならない声が感じ取れた。



『ありがとうございました〜』



支払いを済ませて店を出る。



「ヨウライ君もお人好しだね」



ふと横を見るとルミナが立っていた。



「聞いていたのか?」


「ウン、外からでも丸聞こえ」


「それはこの店の防音がなっていないからだな」


「でも、良かったの?」



ルミナはクスッと一笑してから俺に尋ねた。



「ああ、どうやら根は悪くないらしい」


「ヨウライ君がそう言うなら大丈夫だね」


「ああ」



俺とルミナは顔を見合わせて小さく笑った。



「どうする?ヨウライ君。学校午前中までだったからもう終わっちゃってるよ?」


「マジで?学校まで鞄取りに帰らなねぇと」


「あ、鞄なら脩子ちゃんが持ってきてくれてたよ。ハイ」



ルミナが俺の鞄を差し出す。



「あんがと。しかし焔も気が利くというか何というか・・・」



ここまで先読みした焔に称賛を与えたい。


ふと空を見上げれば雨も上がったようで、青空がその顔を覗かせている。



「さて、雨も上がったし家までお送り致しましょうか?お嬢様」


「お願いします、騎士(ナイト)様♪」



もう一度、顔を見合わせて笑ってから俺達は並んで歩き出す。


気が付けば指先が触れたかと思うと、なんだか自然に手が繋がっていた。


雨上がりの空には薄っすらと虹が浮かび上がっている。


後の事は・・・ 

また家に帰ってから考えよう。


とりあえず、今はこの時間を大切にしないとな。

そんな、本格的な夏を迎える前の1ページ。




















「ここ何処だ!!?」


「知らないわよ!だから深入りするなって言ったのに!」



結局この後、ホーム(本拠地)で迷った二人を逆探知で俺が迎えに行く羽目になった。