家族での外出はここ最近全く無い。
俺が半年間、ドイツにいたもんだから無理もないかも知れないが。
正直、俺は今、複雑な状況にあるんだけど・・・・
どうしたものか・・・・
::第3話 - story4::
道中は俺達の車を取り囲むように4台の車がピッタリと張り付いて護送する。
親父は政界にも顔が利いていてそれ故、命を狙われている恐れがあると警視庁
のほうから警告を受けている為、このように特に家族で移動するときなどは必ず
護送車が付く。
家族にとっては、全くもって迷惑な話である。
二車線ある道路は俺達の車で塞がれる為、少し渋滞という形になってしまっている。
市民にとっては、全くもって迷惑な話である・・・
15分ほど車を走らせて着いたのが、芸能界・政界の有名人御用達の高級中華料
理店「燕帝(えんてい)」。
この店の自慢がフカヒレをふんだんに使ったスープだとか。
まぁ、どうでもいいのだがな。
親父の身長を2mを越す勢いぐらいあるボディーガードが厳重に辺りを見渡し、安全
を確認して俺達を降ろす。
勿論、俺やお袋や百合華にもボディーガードがつけられる。
大の大男4人に囲まれるといい気分になる訳も無く額から汗が垂れる。
しかし、自分より大きい人間を見たのはドイツで留学していた時ぐらいだ。
ヨーロッパの人って本当に大きい。 洒落にならん。
そんな事よりもまぁ、親父が大金出して一流のボディーガード雇っているならそれは
それでいいんだが・・・。
この店に来るのは初めてだったので、少し期待もしている。
店内に入ると、いかにも『中国』と言うわけではなかったが、その独特な風情をかもし
出している。
所々に、朱赤の柱や壁には龍や虎の絵が直に描かれていたりと、職人芸という物を
見せてもらった。
店内を見回りながらも、予約席に案内される。
久々の家族外出は親父をはじめ、俺も百合華もとても嬉しかった。
特にお袋のとても嬉しそうな顔を見たのは久しぶりだった。
「お待たせ致しました」
ウェイターが料理をワゴンに乗せて俺達の座る席へとやってきた。
「『車エビのマヨネーズ和え』と『四川風豚の角煮』、『北京ダック』でございます」
それはそれはご丁寧にどうも。
・・・・。
ん・・・?
誰か注文したっけ?
「なぁ、誰か注文したのか?」
たまらず親父に訊いてみた。
「ここ来る前に、あらかじめコースの予約をしておいたのだ。わしらが到着すると同時
に品物が出てくるようにな」
と、親父は自慢気にフフンと鼻を鳴らした。
別に自慢する事じゃないぞ。親父。
そうこうしている内にも続々と料理が運ばれてくる。
「『八宝菜』と、『蟹チャーハン』になります」
ウェイターの声を無視して、俺達は食事をしながらとても多くの事を喋った。
百合華の学校生活や、親父の会社で起こった騒動など、時が忘れるくらいに語り合った。
実質、数時間前に俺に起きた出来事など当の本人はこの時間、すっかりと忘れてしまって
いた。
二時間弱、燕帝で食事をして夜も更けようとしている街を車のウィンドガラス越しに見ながら
帰路に着く。
さっさと風呂に入り、『ボスッ!!』っとベッドに飛び込む。
この時の俺の心情は明日の事で頭が一杯であった。
(どうしたものか・・・)
と、考えているうちに俺は深い眠りへとおちていった。
しかし、俺の1日はまだ終わらなかった。
「ん・・・」
いやに体が重い。開いた俺の目には薄暗い部屋の天井しか見えない。
ぼんやりと霞んでいたから余計にそう映った。
「う・・・ん・・・」
ん?誰だ?俺以外の声が聞こえるけど・・・
ゆっくりと横に首を倒すとそこには百合華が気持ちよさそうに俺にくっついて寝ている。
「なんだ・・・百合華か・・・」
俺は再び眠りにつこうとした。
が、その前にひとつの疑問が浮き上がった。
・・・ん?
ここって俺の部屋だよな。なんで百合華が寝てんだ・・・
その瞬間に俺の瞼はパッチリと開いた。
バッ!!ともう一度横を見るとそこにいたのは正真正銘、俺のブラコン妹だった。
俺の頭の中に、大きく「夜這い」、「夜襲」etc・・・ と、言う文字が次から次へと
溢れ出て、今年最大のパニック状態になった。
「・・・・・・・・っ!!!!!!!!!!」
声に出なかったものの、顔は強張り、目はまっしろになって、口はポカンと大きく開き、髪の毛は逆
立つという、はたから見ればもはや、同一人物とは思えない形相となってしまっていた。
「・・・・・・っっっ!!!!!!???」
こんなんでも悪魔でも冷静を保ち、一生懸命にどうしようかと悩んでいる俺の頭の片隅に小さくポツ
ンとある言葉が思いついた。
『夢だろ?』
この言葉は即座に「夜這い」、「夜襲」etc…を蹴散らし、俺の脳を支配した。
「あぁ・・・ 夢か・・・」
そう呟いて目を閉じると、一面の花畑で、『ウフフ』、『アハハ』と言う声が聞こえる。(ヤバイ)
遂にやってしまった現実逃避。
俺はその場を逃れたい一心で再び眠りに堕ちてしまった。
