清清しい朝を迎えた俺は、珍しく7時に起きた。
『チリンチリン』
鈴を鳴らして鴨川さんを呼ぶ。
「坊ちゃま。お呼びでしょうか」
「着替えを頼みます」
「かしこまりました」
俺は制服に着替えて食堂に降りた。
::第3話 - story1::
食堂では新聞を読みながらコーヒーを飲む親父とキッチンで朝食を作るお袋の姿があった。
美味そうなハムエッグの匂いがしてくる。
「おはよう。耀氏v
「おはよう親父」
「あら、耀氏Bおはよう」
お袋はキッチンから顔を出していた。
「おはようお袋」
「今日は早いのね」
別に早く起きてもいいじゃない!! あぁ。そう叫びたい。
「なんか気持ちよく目が覚めたからな」
「あら、そう」
お袋はこのような豪邸に住んでいながらも、朝は俺らの食事を作る。
何度もお手伝いさんに止められたようだがお袋は頑として任せようとはしないのである。
「耀氏B手があいてるんなら百合華を起こして来てくれないかしら」
「ああ、分かった」
俺は百合華を起こす為に百合華の部屋に向かう。
ドアを開けるとヌイグルミなどで部屋中埋め尽くされており、百合華の寝ているベッドにもヌ
イグルミが敷き詰められていた。
「うひゃ〜〜・・・」
俺は目が狂いそうだった。その中から百合華を見つけ出し、揺すって起こす。
「百合華。百合華」
「ん〜〜・・・・」
寝ぼけているようだ。
「百合華。早く起きな」
「お母さん・・・?」
誰がじゃい。
「百合華、もう7時だぞ。遅刻しても知らねぇぞ」
「あ、お兄ちゃん・・・ お兄ちゃん!!?」
百合華は俺の姿を確認するや否や飛び起き、いきなり抱きついてきた。
「ワーイ♪お兄ちゃんが起こしに来てくれた〜〜♪」
「わわわ!!!」
俺は抱きつかれたまま百合華を上にして倒れこんでしまった。
「イテテ・・・ 百合華!危ないだろ」
「ごめんなさ〜い」
上体を起こした俺を上目づかいで見る。
がー!!!そんな目で俺を見るんじゃない!!!
これはまた厄介な攻撃だ。どこでこんな事覚えたのやら・・・。
「百合華。早くのいてくれ」
「ヤダー♪お兄ちゃんとずっとこうやってる♪」
「百合華!」
「なぁに?」
「遅刻するぞ!」
「えぇっ!!ウソーッ!!」
百合華はさっさと俺から離れ、時計を見ながら着替えを始めた。
・・・待て待て
少し変だよな。俺が目の前にいるのにか?
おいおいおいおい!!
ウソだろー!!!??
「百合華!!」
「何?お兄ちゃん」
百合華は上着を半分脱いだぐらいで俺のほうに振り向く。
『ブツッッッ!!!!』
勢いよく俺の鼻から血が飛び出る。
「百合華!!!着替えは俺が部屋を出てからしないか!!」
「だって遅刻しそうなんでしょ?じゃぁ、急がないと」
すると、今度はズボンをも脱ぎ始めた。
コイツわざとやってんのか?
そんな事されたら俺は学校行く前に病院行きだ。
「わたた!!!」
俺は足をもたつかせながら部屋を飛び出し扉を閉じた。
どこから持ってきたのか、鼻一杯にティッシュを詰め込んで出血を抑える。
「ちくしょぅ・・・・ 情けねぇ・・・・」
俺は熱くなった顔を洗うために洗面所に向かった。
『バシャバシャ!!!』
冷たい水が火照った顔を冷ます。
「ふぅ・・・」
「耀似l?」
「うわっ!!!」
俺は死ぬほど焦って振り返る。
そこにはお袋のお手伝いさんが立っていた。
「な・・なんでしょうか・・・?」
「朝食の用意が出来たと奥様から申されまして・・」
「あ、分かりました。すぐ行きます」
「お願いいたします」
コツコツと遠ざかっていく靴の音が残った。
「はぁ・・・はぁ・・・ビビった・・・」
俺の額には冷や汗が滴っていた。速攻でもう一度顔を洗って朝食をとるため食堂まで
飛んで行った。
百合華も着替えが済んで朝食をとっていた。
お袋の作るメシは格別に美味い。もともと料理の腕も良いお袋は自分で料理をしたいようだ。
「あ、そうそう。耀氏A百合華」
お袋が話をふってくる。
「ん?」
「何?」
「今日はなるべく早く帰ってきてね」
「何時くらいがいい?」
「そうね、お父さんが帰ってきたら家を出るつもりだから7時には帰っててね」
「あーい」
「ハーイ」
一通り話が終わると、俺達はそれぞれ学校に向かう。
お袋は手を振りながら俺たちを見送っていた。
─聖クライアンヌ女学院前。
生徒たちは続々と校門をくぐっていく。この日は皆と同じ時間に登校できるようにしてお
いた。
笹川先生は当分の間はと言っていたけれど俺だけ遅れて登校しても良いなんて不公
平であったので今日はそれを無視してやってきた。
多数の生徒が登校しているが、よく考えたら俺はリムジンで登校なのだ。
・・・完全に場違いである。
スモークのかかった窓から外を見ると物珍しそうにリムジンを見るクラ女の生徒たち。
さすがの有名女子校でもそこまでも金持ちはいないらしい。
片谷さんにわざわざ開けて貰い、なるべく自然な感じで車から降りた。
その途端にザワザワと騒ぎだす生徒達。
「じゃぁ、片谷さん。今日は早めに切り上げますんで」
「かしこまりました」
俺はバッグを担ぎ直して校門をくぐった。しかし、初めて色んな人とくぐった門はまた別
の新しい感じがした。
俺はようやくこの学校の生徒となった事を実感した。
遅いけど・・・
「ヨウライくーん☆」
ゲッッ・・・・ いきなり名前で呼ぶのは・・・・
ルミナだ・・・
「ヨウライ君、オハヨー☆」
「ああ、おはよう幸田」
やっぱり・・・
「あ・・あの・・・ 昨日はありがとうね☆」
ルミナは顔を赤らめて言う。
「あ、ああ。気にしないでくれ」
俺も恥ずかしくなり、少し慌てる。
「今日は早いね。いつも3時限目に来るのに」
「今まで先生に早く来なくてもいいって言われててさ。でもそれじゃ俺だけが授業の範
囲が遅れるし、不公平だからな」
「ふーん。しっかり者だネ☆」
別にそんな気はないが?
「で、今日の授業って何?」
「今日はね〜・・・ 英語と世界史と音楽と漢文だよ」
「ありがとう。おっと、先に職員室行かないといけないから先に行っててくれる?」
「うん、分かった。また後でね☆」
「ああ」
一時、ルミナと別れ、俺は職員室に向かう。
