「前の学校が男子校だったから、大変だったのよ」


「あの・・・」


「でも、急にここに配属になっちゃってねぇ」


「ちょっと・・・?」


「極端に変わりすぎるのもどうかと思ったのよ」



・・・・・・。


とりあえず気の済むまで喋らせた方がいいのだろうか・・・?




::第5話 - story3::




結局、5分間も話を聞かされた。



「とりあえずコレ・・・」


話に区切れを入れて、食券を差し出す。



「はいはい。え〜と、グリルチキン1!カルボナーラ1!ピラフ2!鯖味噌定食1!」



オバちゃんは大声でオーダーを通す。


よく見ると、料理人も女性だけだ。


本当にこの学園に男が俺だけなのだと痛感する。



大きなトレイに乗せられた品物を片手で持ってルミナを探す。



ん?なんだ?ケンカか?


何やら中央付近で言い争いする光景が目に入った。



「んんん???」



目を細めてみると言い争っている片割れは正しく美香であった。



「何してんだ?あいつ・・・」



半分呆れながらも現場に向かう。近づいていくとともに言い争いの声が聞こえてきた。



「・・・だから、ココはあたし達が先に確保してるの!!」



どうやら相手は高学年の年上の先輩らしい。


数人従えて、空いている席もあるのにわざわざ美香達の取った席に座ろうとしている。



「新入生のクセに食堂を使おうとする事自体が間違っているのよ。帰って大人しくパン

でも食べてなさい」



フンッと鼻を鳴らして美香を見下げる感じで髪の毛をまくる先輩。



「なんですって〜〜!!」



美香は相当頭にきたらしい。



「あらあら。顔を真っ赤にしてカワイイお猿さんだ事」



ホホホとたかわらいする先輩。美香も負けじと同じような口調で言い返す。



「あ〜ら、老化の進む年増な先輩には席をお譲りした方がよろしいのかしら?」



お!?上手い!座布団1枚!



っと、そんな事言ってる場合じゃねえや。


今度は先輩のほうが顔を真っ赤にしていた。



どうやら侮辱されるのがイヤらしい。


・・・だったら最初からすんなよ。



所でルミナはと・・・ 



あ、後ろでアタフタしてらぁ。


とりあえず問題起こしてたら飯も食えんから止めるとするか。



俺がトレイをテーブルの上に置いた時、事件発生。



「よ・・・よくも私を侮辱してくれましたわね!!!」



と、言って手を振り上げた。この状況からすると殴りたいようだな。



美香は反応が遅れたのか避ける事を諦めて目をつむってグッと歯を食いしばった。


が、しかし、先輩の振り上げた手は結局降りる事は無かった。


なぜなら俺がその手を押さえていたからだ。



「な・・・な!!?」



先輩は言葉になっていない言葉を上げていた。



「うちの連れが何かしましたら、お詫び申します」



グッと顔を近づけて、自分でも気持ちが悪くなるくらいのホスト口調で言ってみた。



「え・・・え!!?」



この人も混乱してる・・・ 


いい加減にしろよな。



「後輩には優しく接しないとね。ほら、あちらの方で席が空きましたのでそちらの方に移

動して頂ければ光栄ですが?」



俺は、この席より少し離れた空席を指差した。


が、それよりも何か強い視線を感じた。


チラッと先輩の方を向いてみると、腑抜けた顔をしてこっちを見ていた。



ん・・・?なんだそのキラキラとした眼は・・・ 



「は・・・ハイ・・・」


そう残してフラフラと空席へ移動する先輩。俺は何事も無かったように席に座って鯖味

噌定食を食べ始める。


とりあえず事件は未遂で終わった。



「どうした?食わねえの?」


「えっ!?あ、いや。食べるけど・・・」



ルミナと美香も席に着く。



「あんまし問題起こすなよ?」


「でもさぁ、ムカつかない?他の席が空いてるのにあたし達の所に来るんだから」


「でも、しょうがないよ美香ちゃん」


「なにがよルミナっち」



ん?こいつら顔見知りか?



「何、知り合い?」



と俺が聞くと



「うん。中学からの友達」


とルミナ。



「そーそー」



と美香。



なんだよ友達かよ。


てっきり初対面かと思うじゃねえかよ。



「私、こう見えて人見知りとか激しいほうだったから中学時代とか友達いなかったの」


「で、そんなルミナっちを見兼ねて声かけたのがあたし」



美香は自慢気に話す。



「ところで今の人、誰か知ってる?」



気になったので聞いてみた。



「あ〜、あいつね・・・」



嫌そうな顔をする美香。



「この学園の生徒会副会長の夜叉小路麻美(やしゃのこうじ まみ)よ。家が大手の会社

で令嬢らしいわ。それをいい事にやりたい放題。いつも数人引き連れて歩いてるのよ。気

に入らない子が現れたら徹底的に嫌がらせするんだって」



美香はピラフをほお張りながら悪態をついて話す。


無茶苦茶悪口言ってんな・・・ 



「でも、学園緑化活動やクリーン活動を推し勧めたのはあの人だって聞いたよ」



とルミナが言う。



「それなりにいい事やってんじゃん」


「まぁね。でも悪い噂とかの方が遥かに多いわよ」



美香はどうやら夜叉小路先輩の事が気に入らないらしい。


そりゃ、あんな事になったら誰でも嫌いになるわな。



「ところでさぁ・・・」



美香が急に話題を変えてきた。



「あんた達どこまでいったの?」



その言葉に飯が喉に詰まった。



「んなっ!!?」


「ルミナっちから色々と聞いてるよん♪」



何っ!!ルミナ!テメェコノヤロウ!!



しかし、当のルミナは美香の隣でクスクスと笑っていた。



「で?キスまでいったの?」


「馬鹿言ってんじゃねえ!!」



俺は半ばヤケで白飯を口に放り込む。



「あともう少し・・・」



と、ルミナがボソッと小声でそんな事を口走った。



「ぅぐっ!!!」



またもや飯が喉に詰まる。

頼むから余計な事を言うのは止めてくれ!!と、心の中で叫ぶ俺なのであった。



「あっはっは!!!そうかそうか。あと少しか!!!」



大笑いする美香の正面にはメシが喉に詰まって胸をドンドンと叩いている今にも死にそう

な俺の姿があった。



「っは〜・・・ は〜・・・」



本当に死ぬかと思った・・・ 



そんな俺を心配するような素振りも無く、美香とルミナの話はどんどんと進んでいくのであ

った。



俺、友達にする人間、間違ったな・・・


そう思って止まない。



「ところでよ。栗橋」


「あ〜、あたしのこと美香でいいよ」


「あそ。美香」



もう疑問も持つまい。



「何?」


「今日からバレー教えなくてもいいのか?」


「あ〜・・・ もういいや」


「バレー部には何て言うつもりだよ」


「それなりに伝えとくわ」



なんじゃそれ。



「カワラっちの実態知ったら教えてもらう気にもなんないわ」



ケラケラと笑いながら吐き捨てる。



・・・おい待て。



今、変な呼び方しなかったか?



「カワラっち・・・?」



俺は眉を寄せて片肘を付いて身を乗り出す。



「そ。カワラっち」



美香は当然の如く言う。



「長いし、名前じゃ呼びづらいから。いいでしょ?」



・・・コイツこんなキャラだったか?

急に変わった気がするぞ?



「呼びやすけりゃそれでどうぞ」



諦めた。



「やったね」



いやに頭痛がするのはコイツのせいなのだろうか・・・ 



「じゃぁ、今週の土曜に勉強教えて貰うんだ」



あっ!!ルミナの奴もう喋ってる。



「じゃぁ、その日に襲えるね。チャンスじゃん」



その言葉に、俺は椅子ごと後ろにひっくり返っていた。


なんつー話をしているんだ・・・ 


無駄になんか異常に疲れた・・・ 



今日は早く帰って寝よ・・・


また1つ悩みが増えた俺なのであった。 



無論、その後も何回も2人の会話によって後ろにひっくり返ったのは言うまでもない。