俺が目を覚ましたのは翌日の朝だった。
どうやら昨日の事件から目を覚まさずにそのまま寝入ったらしい。
俺の腕には献血のチューブがリッター級の献血袋に繋がっていた。
::第2話 - story1::
「ちくしょ〜・・・妹の裸見て大量の鼻血出すなんて・・・」
自分の情けなさに苦悩する。
と、言っても俺自身もあまり 『女』 と言うものに対して免疫がない。
理事長から依頼を受けたのはある意味、自分のためにもなると思ったからだ。
「とにかくあのブラコンをどうにかしないとな・・・」
体験を踏まえて強く誓う俺だった。新しい制服に着替えて食堂に向かう。
その途中行き交う人に侘びと礼を述べて言った。どうやら昨夜の事はあまり気にはしていないらしい。
食堂ではもう既に3人とも食事をとっていた。しかし、百合華の顔に昨日の明るさは無い。
どうやらお袋に叱られたらしいな・・・。さすがに今回は反省してもらわねば俺も困る。
「おはよう、耀氏v
「おはよ」
「耀氏B気分はどう?」
「大丈夫だよ、お袋」
「お兄ちゃん・・・」
「百合華オハヨウ」
「うん。オハヨウ♪」
どうやら百合華は俺が怒っていない事に気づいたらしい。
あぁ、なんで優しく接してしまったのか・・・
ここが俺の悪いクセ・・・
だから、いつまで経っても百合華は俺から離れようとしないんだな。
よし、ここは一つ・・・
「百合華」
「なぁに?」
「もう、百合華も子どもじゃないんだからあまり俺と風呂は入らないようにな」
「う、ウン・・・」
結構ショックだったみたいだ。
俺と風呂に入ることが百合華の楽しみだったらしい。
「耀獅フ言うとおりですよ百合華。あなたももう年頃の女の子なのよ。お母さんや
お手伝いさんとなら入っても構わないんだけどね」
「分かった・・・」
「なんならお父さんと一緒に入るか?ウッッ!!!」
即座に俺の右フックが親父の横腹に入った。
「親父〜〜・・・」
「冗談だよ冗談・・・」
「あなたの場合、冗談で済みそうに無いですわ」
「おいおい、お前まで何を言うんだ」
親父は慌てふためいている。
「百合華、お兄ちゃんとお風呂入るの少なくする」
「そうか・・・ 分かってくれたか」
これでなんとか安心だな。
「これからは週に1回にする♪」
『ガシャーン!!!』
俺はあまりの脱力さに顔からテーブルに落ちる。
「そうね、それならいいわ」
のたうちまわって倒れている俺を気遣う様子もなくお袋はさらに追い討ちをかける。
「ヤッタ〜〜♪」
お袋・・・やっぱり百合華はあんたの子だよ・・・
つくづくそう思って止まない俺である。
「それじゃぁ、わしは行って来るよ」
「あら、あなたもうお出かけに?」
「ああ、朝一の会議があるからな」
「いってらっしゃい」
「うむ」
「いってらっしゃ〜い♪」
「耀獅燻條ヤはいいの?」
「おっと、マズイな」
「百合華も早く食べなさい」
「ハ〜イ」
静かな時間の中、朝食を食べる。
「そいじゃぁ行って来るわ」
「いってきま〜す♪」
「二人とも気をつけてね」
お袋に見送られて俺と百合華は学校に向かう。
「片谷さん・・・」
「なんでしょう」
「片谷さんは俺があの学校に編入するって事、知ってたんですか?」
「恐れながら・・・」
「一言ぐらい言ってくれれば良かったのに」
「申し訳ありません。旦那様に固く口を止められていましたので」
「親父が?」
「はい。あの学校に行くことによって坊ちゃまの女性に対しての知識を学ぶであろうと・・・」
そこまであの親父も考えていたかと考えると、親父の慧眼さに恐ろしさも感じた。
「さぁさ、坊ちゃま。着きましたよ」
「ああ、ありがとう。あ、いいよいいよドアぐらい自分で開けるよ」
「左様で御座いますか」
「じゃぁ、また帰りに連絡します」
「かしこまりました」
車を見送った俺は両手で頬を叩き気合を入れた。
「ウシッ!」
昨日の様な事にはなりたくなかったので大きく息を吸って校門をくぐった。
しかし、登校する生徒は見られない。グラウンドでは体育の授業をしている。
「あれ?俺、遅刻?」
と思ったが、登校時間は先生に言われてたし間違いはない。
ピンときた。おそらく通常の登校時間では襲われるであろうと考えたのだろう。い
い気配りじゃないかと俺は心の中で喜んだ。まず、職員室に向かう。
「おはようございます」
「あら、甓尖君。おはよう」
俺は運良く笹川先生と最初に会った。
「先生はこの時間休みですか?」
「ええ」
「次の授業なんですか?」
「次はね、体育ね」
「・・・体育?」
「そうよ。体育」
「体操着持ってないんですけど・・・」
「それはこっちで用意してあるわ」
昨日渡せよ。
「はぁ、どうも・・・」
「とりあえず体操着と学校の地図を渡しておくわね」
大きく四つ折された地図を貰った。
「あ、すいません」
「また校内の案内は他の子に任せるから」
「はい」
「今日の体育は体育館でするはずよ。むこうにあなた専用の更衣室も備え付けてあるか
らそこで着替えてね」
「分かりました」
俺は職員室を出ようとしたが、すぐに引き止められた。
「あ、あとコレ。体育館専用のシューズよ」
「どうも」
「あと10分もしたら授業が終わるからそれまで自由にしていていいわ。体育館も今は誰
も使ってないから先に行って着替えていてもいいわよ」
「何から何まですいません」
お喋りも過ぎましたね。とも、言いたかったが紡んだ。
「どういたしまして」
俺は、教室に行くのもなんだと思ったので体育館に向かうことにした。